重度身体障害者の在宅勤務を考える――

トライアングル Vol.14 1998.6(平成10年)

企業の方々、参加しませんか?「ジョブマッチングシステム」
障害のある人の在宅で初めての仕事 レポート
インターネットサーバー勉強会
NHK教育テレビ「共に生きる明日」放送されました!
平成10年度 春期第2種情報処理技術者試験合格

企業の方々、参加しませんか?
「ジョブマッチングシステム」

 以前にお知らせいたしました「ジョブマッチングシステム(仮称)」をインターネット上で試行開始しましてから2か月となります。 このシステムは、求人者と求職者(障害のある方を対象)との出会いの場を提供するインターネット上のサイトです(現状では、職業紹介、斡旋などの行為は全く無く、お互いの情報参照の場であり、意中の企業、人物へのアクセスは自己責任で行う方法をとっています)。

ホームページ/トップ

 現段階で求職者は約80名。質問、ご相談のメールも日々いただいており、皆様からの期待がうかがえます。 参加企業はまだ8社ですが、登録のご相談を受けている企業、大学、自治体なども増えつつあります。 就労にまつわる相談MLでの質問、相談の多くは、「○○の勉強をしています。在宅勤務できるでしょうか」といった求職者の不安から、「継続的に支援してもらえるような助成金はないのでしょうか」といった切実な企業サイドの悩みまで様々です。

ホームページ/募集

 皆様からのご意見メールで現在システムは内容、インターフェースともまだまだ変化の途中です。 近々の課題としましては、「知的障害、精神障害の方の就労支援の可能性」を盛り込むことを考えています。 知的障害のある方が働く授産施設や作業所などの就職担当者、あるいは養護学校の先生などにもご利用いただけるよう、現在、登録の方法を考慮しています。

 今後とも皆様からご意見、ご要望を忌憚なくいただけますよう、どうぞよろしくお願いいたします。 企業の方々につきましては、お気軽にご相談いただきました上で、ご登録いただければ幸いです。

(堀込)

※ ジョブマッチングシステムのURL http://jms.vcom.or.jp/

※このシステムは、VCOM(慶応大学金子郁容教授研究室が中心となったインターVネットを利用した情報コミュニティ:期間を限定した社会的実証実験をすすめている)が運用しています。

障害のある方の在宅で初めての仕事
レポート

根岸さんの在宅での作業様子  内部障害の場合、外見からはその障害がわかりにくいのですが、毎日の通勤が困難な方が多く、在宅勤務はこの方々にとって有効な就労形態といえます。

 今回は、心臓疾患のため体力的に外出が制限される根岸さんの在宅勤務のようすをご本人にレポートしていただきました。

      
根岸 誠
心臓疾患1種1級
ONE・STEP企画 会員
(在宅パソコン講習第14期生 平成10年3月修了)

作業前の不安

 この度、私は2年間の在宅パソコン講習を終え、在宅での仕事の話をいただくことができました。 仕事の内容は産能大学の「通信研修総合ガイド」(通信講座のコースガイド)と言う1冊の本の内容をhtmlファイルにし、ブラウザソフトで閲覧できるようにするというものです。

 発注担当の方の話では、難しい仕事ではないとのことでしたが、私にとっては初めての仕事なので、不安な面がいくつかありました。 まず第一に、在宅ということで、メールや電話だけで、作業上発生してくる様々な問題に上手く対処できるのかどうか。 第二に、それまで個人のホームページは持っていましたが、特にhtml言語に詳しいわけではなかったので、要求通りのページを作れるのかどうか。 あと、もうひとつは、今回の仕事は納期の短さと作業量の多さから、私一人だけでなく、私を含めた3人で作業をすることになり、私が各人に作業範囲を振り分けたり、発注担当者と連絡を取り合い問題のある箇所の作業を指示したりするという「とりまとめ役」となったことです。 自分のことだけでも精一杯と思われる上に、それ以外の作業のチェックやデータの取りまとめなんてできるのだろうかと、かなりのプレッシャーを感じました。

 しかし、いざ作業が始まってみると、それまでの不安は消えてしまいました。 実際に仕事にかかる前に、2度ほど発注担当者の方と問題のある箇所の作業方針を確認していたので、特に慌てるような箇所もなく、比較的スムーズに作業を進めることができました。 その上、今回私と共に作業をしてくれることになったのが、講習の同期生、渡辺さんと天沼さんだったので、連絡を取る際にも気を使わずに済みました。

 
作業の進め方

 実際の作業内容は、各人が割り当てられたコースを、1ページずつ、事前に作成した雛形にテキストデータを貼り付けて作成します。 そして、出来上がったページは、その日の終わりに私にメールで送っていただき、それを私がチェックして、ある程度、数がまとまったところで、発注担当者に送るというものでした。

 データのやりとりにはメールを使い、あとは殆ど電話で連絡を取り合いました。 メールではどうしても回答が後々になってしまうので、納期などのことを考えると、その場その場で問題を解決して行かなければならず、お互いの連絡には電話を多用しました。

 当初、ひとり一日10ページを目標に作業を進めましたが、思ったよりも作業が早く進み、休めないのではと思っていたゴールデンウィークに、しっかりと休息を取ることができました。

 
在宅勤務に必要なこと

 ゴールデンウィークが明けてからは、直しの作業が始まり、今もまだ細かなところの直しをしていますが、在宅で仕事をする上で大切なことは、お互いの通信環境を確認することと、事前の打ち合わせなどをしっかりとすることではないかと思いました。

 あともうひとつ、これが一番大切だと思いますが、お互いの信頼関係を築くということも忘れてはならないと思います。 在宅では相手の表情が見えない分、つまらぬ誤解が生まれやすいと思うので、なるべく多くコミュニケーションを取り、お互いを知り、信頼関係を築くことが大切だと思いました。

 在宅で仕事を始めてまだ間もない私ですが、これまでに得た経験を、今後の在宅勤務に活かして行きたいと思っています。


★   ☆   ★
※根岸さんは、この仕事のあと、社会福祉法人 東京コロニーにて在宅勤務で採用されることとなりました。上司となる戸原氏より一言!

 今回のようなテキストデータのhtml化の仕事は、これからますます多くなると予想されます。 根岸くんには、こうした仕事を軸にして、DTPやデータベースなど幅広い仕事に対応できるようになってほしいです。 頑張って一緒に勉強していきましょう。
(戸原)

インターネットサーバー勉強会
 5月20,27日にONE・STEP企画会員を対象に外部から講師をお招きして「インターネットサーバー勉強会」を行いました。 この企画を考えたきっかけとしてはインターネットサーフィンなどは誰でも気軽に楽しむことができますが、 いざ、それを深く勉強しようとネットワーク関係の本をひもとくと、どれも難しく、なかなか手がでないものばかりでした。

 こうした話を相談したところ、日本障害者協議会の情報通信ネットワークプロジェクト委員をつとめていらっしゃる島谷綾子女史が快く講師を引き受けて下さり、 また、トーコロ情報処理センターに会場の手配や諸々の準備をしていただいたお陰で、勉強会が実現することになりました(島谷さんは高齢者の方のパソコン講習の方でもご活躍です)。

 勉強会の目標としては「インターネットの仕組み」という基本的な話から最終的にはUNIXベースで「サーバーを構築する」ことを目標とした勉強会で、 5/20,27日の2日間は「インターネット概論」ということで、主に下記の内容を中心に講義していただきました。

1. ISP(Internet Service Provider)におけるサーバの種類と仕組み
2. TCP/IPプロトコル
3. 最新のテクノロジーと、既存のテクノロジーの応用について


 ここ数年のインターネットをはじめとしたコンピューターテクノロジーの進化には、めざましいものがあります。 また、パソコン人口における障害者の割合も急激に増加しています。 それにより、ONE・STEP企画が障害者のために行っているパソコン講習の受講者のニーズは、質、内容と共に高度化していくことが考えられます。

 私は、今年からONE・STEP企画に入会しましたが、いろいろな勉強会を行うことで、ONE・STEP企画全体のコンピューターリテラシーの向上と、 様々な人々のニーズに応える講習を行えるようまた、将来的には、 一般の人々にも受講していただけるような講習会を開けることを目標とし、 ONE・STEP企画の一員として頑張っていきたいと思います。

[ONE・STEP企画 小林秀浩]

NHK教育テレビ「共に生きる明日」
放送されました!

 パソコンで人生を切り開く 

〜 障害者在宅就労の挑戦 〜

在宅での様子(TV画面から)  6月4日の木曜日(19:30〜20:00)、パソコンを使って在宅勤務にトライする一人の青年がNHKの番組で紹介されました。 その方は、トーコロの在宅パソコン講習13期生の小川忠さん。 小川さんが大手企業に就職という道をたどるまでの経緯を、ゆっくりとした静かな調子で番組は追っていきました。

 放送の反響は大きく、その後関係者には励ましを中心とした暖かいメールやお電話をいただいております。 中でも一番多いのは、「こうした教育や就労支援の底辺が拡大すること、 自分が住んでいる地域で相談ができること」といった今後への期待です。

 現在、各省庁,自治体でも、この種の取り組みが少しずつ生まれようとしています。 この番組が新しい可能性探りのひとつのモデリングになれば、と心から願います。

[堀込]


平成10年度春期
第2種情報処理技術者試験合格

 おめでとう! 


M.E さん 関節リウマチ1種2級

  ONE・STEP企画(在宅パソコン講習第11期生)

W.M さん 頚椎損傷1種1級

  ONE・STEP企画(在宅パソコン講習第14期生)

A.H さん 頚椎損傷1種1級

  在宅パソコン講習第15期生

T.S さん 頚椎損傷1種1級

  在宅パソコン講習第15期生

M.T さん 頚椎損傷1種1級

  在宅パソコン講習第15期生

Y.K さん 慢性関節リウマチ2種2級

  在宅パソコン講習第15期生

W.E さん 慢性関節リウマチ1種1級

  在宅パソコン講習第15期生




編 集 後 記

 天気もおかしいし、社会も何か変ですね。しかし、もっと驚いたことは、春の2種試験に在宅講習生 がなんと7名も合格したことです。幸せな驚きでした!
(小川)    


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