重度身体障害者の在宅就労を考える トライアングル
 
 

Vol.33 CONTENTS  2004.11(平成16年)

   

■「東京都障害者ITサポートセンター」のオープン

■障害のある方の在宅就労事例

■国際福祉機器展レポート

■NECソフト株式会社の見学

■「アビリンピックみやぎ」にいってきました

■編集後記




     「東京都障害者ITサポートセンター」のオープン
 
〜ご来場お待ちしています〜

 

 このたび、社会福祉法人東京コロニー職能開発室では、東京都より委託を受け、障害者ITサポートセンターをオープンする運びとなりました。

 各種相談は社会福祉士資格を有するスタッフが、技術的なご相談はもとより、生活上のIT利用の目的等をゆっくりうかがい、関連機関や他の福祉リソースの紹介も含め、ご一緒に問題点の解決をはかります

 必要な際は、機器コーディネータ(e-AT資格保持者)が、機器の調達のお手伝いや、今後のサポート体制をスタッフとともに計画いたします。

 また、入力機器等は、技術サポータによる個別の製作もあり、リハビリ工学を理解したエンジニアが関わります。安心してご相談ください。

 パソコンに関する情報の他にも、都内の障害者対象講習会のお知らせや、IT利用支援活動を行っている地域の団体情報などが掲示されています。

 これからITを始める方も、すでにご利用の方も、ぜひ一度お越しください。また、障害のある方のみならず、学校の先生や福祉事業に携わる方などなど、都民の皆様の積極的な活用をお待ちしております!

[堀込]


 

■主なサービス
○IT支援機器などの相談窓口
○パソコン入力や音声出力などの展示(体験)
○IT講習室や機器の貸出
○IT講習会の開催
○ITサポーター養成・派遣

■利用時間
午前10時から午後6時まで
(但し、土曜日は、午後1時から午後6時まで)

東京都障害者ITサポートセンターの看板

 

■閉館日
水曜日、日曜日、祝祭日、年末年始

■交通
JR・西武新宿線 高田馬場駅より 徒歩約15分
バス 都立障害者センター前 下車  (高71系統・早77系統・池86系統)
[地図とご案内]
http://www.tokyo-itcenter.com/300koutu/index.html

■連絡先
〒162-0052 東京都新宿区戸山3-17-3
東京都心身障害者福祉センター新館3階
電話 03-3208-0471 FAX 03-3208-0472
http://www.tokyo-itcenter.com/




     障害のある方の在宅就労事例

 

高橋 むつこ さん

(50代 消化器系特定疾患)
(SOHO歴 13年目)

  高橋さん
高橋さん

 

 今回は、SOHOを始めて10数年、東京コロニーのSOHOチームes-teamでもご活躍の高橋むつこさんにご登場願います。

 es-teamが組織として動きだす以前から今日まで、「どんな仕事もまかせて安心」と、信頼の厚い高橋さん。底ぬけに明るい笑い声の裏には、どんな日々があったのでしょうか……。



  Q:SOHOを始められたのはいつ頃ですか。
   自分ひとりで仕事をし始めたのは、12〜3年前ですね。きっかけは友人の編集者から自宅でできる校正の仕事を紹介されたことです。当時はワープロなんて使わない、赤鉛筆ですよ(笑)。

  Q:自宅で仕事をしようと思われたのはご病気のせいですか?
 

 そうです。大学を出てからマーケティングリサーチや公益法人の事務処理をしていましたが、ある日、クローン病という大腸の難病になりまして。下痢や発熱から始まって、しまいには痛くて動けない状態に。そのうちに2〜3ヶ月の入院と退院を繰り返すようになり、家のことさえも満足にできなくなりました。今は病気と少しはうまく付き合っていけるようになりましたが、時には制限されてるコーヒーを飲んじゃって後で「しまった」という日もあります(笑)。


  Q:自宅でお仕事を開始してからは順調でしたか?
 

 いえいえ、「何かしたい」「でも何もできない」という渦の中で、趣味の機械編みを活かせないかとも思いましたが、中国製の安いものが入ってきたりで……(笑)。

 さきほどの校正作業あたりからようやく仕事の真似事ができるようになったのですが、もうひとつのきっかけは、新聞で見て参加した公開講座で東京コロニーの方と知り合い、SOHOというライフスタイルを知ったことでした。


  Q:そこから仕事が広がったのでしょうか。
 

 はい。これまでのワープロに加え、ワード・エクセル等を学び、データ入力の仕事も増えました。

 また、2000年にes-teamというSOHO組織に属したことで、他のメンバーの方の技術などを目にするようになり、とても刺激になりました。実は去年、SOHOチームのコーディネーターの方から「WEBの勉強をしてみませんか」と言われ、年齢的に不安はあったのですが「新しい世界を知りたい」というドキドキするような気持ちに後押しされて思い切って始めてみました!


  Q:その結果どうでした?
 

 まだモノになるかどうかはわかりません(笑)。HTMLのオンライン講習を修了しまして、今、自分にとっては箱の輪郭だけ出来た感じ。少しずつ仕事をしながら、その中に物を入れていきたいと思っています。この間までグループの方がMLで話す会話は全て「それって何?」でしたからね(笑)。

 コーディネーターの方もあえて?説明は詳しくなさらないんですよ。急ぎの時だけは質問して教えていただくのですが、普段はなるべく人に聞かないようにして。やっぱり仕事を始めて本気で本を読みましたね(笑)。


  Q:SOHOをなさっている上でポイントはどんなことだと思われますか。
 

  仕事をしていく時、一人でなくMLを使って何人かのグループでこなしていくところでしょうか。以前、他のメンバーの方から「MLでみんなのやり方を盗んで学んでいくといいですよ」と教えていただきました。今は少しでも皆さんの話している会話をわかりたい。学び続けていきたいですね。

 それとグループで業務をこなせるということは、「一人ではない」という安心感があります。最近は体調も落ち着いていますが、決して油断はできませんから一人で仕事を全部請けるということはできません。そういう意味でも自分にあった仕事の仕方だと思います。


  Q:最後に、これからSOHOをスタートする方に何かアドバイスがあったらお願いします。
 

 人生そう多くのことはできないと思うんです。チャンスがあるならダメもとでやってみる。その中で鍵があけばとりあえずあけていけばいい。若くなくても大丈夫、食わず嫌いをしないで中に入ってみてほしいですね。それと、「やってみたい」と思っていても、背中を押されないとなかなか踏み出せない人もいるはず。わたしがコーディネーターの方に声をかけていただいたような出会いは本当に大切だと思っています。一緒に頑張りましょう。

   
  高橋さんの作成したウェブサイト
  高橋さんの作成したウェブサイト


 

インタビューを終えて:

 とにかく明るくて笑いが耐えないのですが、ところどころでホロリとくるようなお話もあり。これまでの様々なご経験が今の高橋さんを燐と輝かせていることがよくわかったインタビューでした。終始口にされていたのは「新しいことを学ぶことは本当に楽しい」。

 そんな高橋さんはきっといつまでも真摯に仕事をこなし、ステキに年を重ねていかれることでしょう。できればうちのSOHOチームでずっと仕事をしてくださいね〜。

[堀込]




     国際福祉機器展レポート

 

 世界の最新福祉機器を展示する「国際福祉機器展 H.C.R. 2004」が、10月13日から15日まで東京ビッグサイトにて開催されました。例年多くの方が訪れている展示会ですが、今年は出展者数が過去最高の645社、来場者も13万人を超えたそうです。会場では、様々な車いす、ベッド、生活用具、福祉車両など、日常生活のあらゆる場面で利用される数々の福祉機器が展示されています。

 情報・コミュニケーション機器としては、車いすやベッドのままパソコンをセッティングできるスタンドや、マイクに向かって話すことで文字の入力が可能なソフトウェア、手首にフィットする形状で手への負担を軽減したマウスなど、新製品から定番のものまで幅広く展示されていました。

 在宅勤務においては、身体に負担のかからない作業環境づくりが重要ですが、今回、前・横・斜めに360度移動できる屋内用車いすの展示もありました。仕事中は、パソコンを使ったり、資料や書籍を探したりと、移動が必要な場合も多いと思いますが、この車いすだとスティック一つで真横や斜めに移動できるため、広い机でも作業がスムーズに行える利点があります。

 福祉機器は、同じ製品でも利用する人によって使い勝手がかなり違ってくるものです。福祉機器を利用されたい方は、ぜひ一度こうした展示会やショールームなどで実物を試用し、自分に合っているかどうか確認してみるとよいでしょう。

[鶴田]

   
  ■国際福祉機器展(財団法人 保健福祉広報協会)
http://www.hcr.or.jp/  ※様々な福祉機器の検索も可能です。



     NECソフト株式会社様での会社見学

 

 7月2日、「IT技術者在宅養成講座」の2年生5名が、NECソフト株式会社様の会社見学をさせていただきました。

 朝10時に本社ビルのある新木場駅に集合したメンバーは、この日のためにシャツを新調した方もあり、緊張した面持ちながらも初めての体験に期待感いっぱいの様子でした。

 見学した箇所は、総務やシステム開発などの職場や会議室、役員室、コンピュータルームなどです。システム開発のフロアでは、座席が決まっていないフリーアドレスゾーンを見学し、社員の現在の居場所を確認する「ドコチャンボード」の操作を体験しました。コンピュータルームでは、さまざまな種類のコンピュータが、騒音と強力な空調装置の中ひしめき合っている様子を見学。普段、教科書では学習している事柄も、実際に目で見てみると迫力の違いが肌で感じられます

 人事の方からは、社会人に必要な資質や、SE(システムエンジニア)という職業について講義をしていただきました。「仕事は一人でするものではなくコミュニケーション力が大切」、「仕事のやりがいはお客様に喜んでもらえたとき」など、一つ一つの言葉がこれから仕事を目指すメンバーの心に染み入ります。

 今回の見学は、先進のオフィスを体験できたことはもちろん、何よりも一流企業の方のコミュニケーション力というものを、私達へのもてなしを通じて教えていただいた思いがした大変貴重な一日でした。

[岩田]

  ■NECソフト http://www.necsoft.co.jp/
   
  NECソフト株式会社様 会議室にて
 
会議室にて





     「アビリンピックみやぎ」にいってきました

 

 10月15日〜17日に「アビリンピックみやぎ」が開催されました。アビリンピックとは「全国障害者技能競技大会」のことで、障害のある方が職業能力を向上させることなどを目的に毎年行われています。

 今回は「IT技術者在宅養成講座」の修了生で現在東洋大学工学部3年生の河村進吾さんが、「コンピュータプログラミング」部門に出場しました。この競技は、工業用ロボットに課題の図形を描かせるというもの。

 

 
工業用ロボット
工業用ロボット

 

 理論上では完璧にプログラミングしたつもりでも、実際のロボットのペン先と紙との距離が場所によって微妙に変わるなど、初めてのロボットプログラミングの世界に悪戦苦闘。しかしその甲斐あって、見事努力賞を勝ち取りました。

 その他には、洋裁、歯科技工、喫茶サービス、パソコン組み立てなど、合わせて21の競技があり、全国から集まった腕自慢が真剣に作業に取り組んでいました。

[岩田]

 
課題に取り組む河村さん
課題に取り組む河村さん

  ■アビリンピックみやぎ
http://www.pref.miyagi.jp/abilympic/



 

編 集 後 記

 先日行われた経済産業省の国家試験「基本情報技術者試験」に、「情報バリアフリーとは何か」を問う問題が出されていました。今や「情報バリアフリー」や「アクセシビリティ」はIT技術者が当然持っていなければならない知識になりつつあるのを実感しました。

[岩田]



 

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