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■重度身体障害者の在宅就労を考える
トライアングル
機関紙『トライアングル』は三菱商事株式会社様のご協力により発行しております。

Vol.42 
CONTENTS 2007.11(平成19年)

■−障害者雇用の新しい方向性−

■障害のある方の在宅勤務事例

■「在宅就業応援マガジン」まもなく完成です

■シリーズ第8回サポートセンター便り 「携帯電話、ここまで来てます」

■「IT技術者在宅養成講座」受講生を募集します

■おめでとう

 現在の障害者雇用の現状は、2006年度の実雇用率で1.52%。徐々にその値は増えてきているものの、いまだ法定雇用率の1.8%には達していません。
  そこで厚生労働省では、障害者雇用の促進を目的として昨年から研究会を開催し、この夏、報告書としてまとめました。それを受け、現在労働政策審議会では、障害者雇用促進法の改正を念頭に置きながら、見直しの検討を進めています(以下その一部)。

●短時間労働を考慮した障害者雇用の促進
  昨今、フルタイムの労働だけではなく、短時間労働など、多様な形態での就労を希望する障害者が増加している。そこで、週20時間以上30時間未満のすべての労働者を、障害者雇用率制度において対象にすることを検討。

●労働者派遣を通じた障害者雇用の促進
  労働者派遣事業については、派遣労働者の受け入れ先となる派遣先企業が積極的に障害を持つ労働者を受け入れるような雇用促進策を検討中。具体的には、派遣先企業が障害を持つ派遣労働者を受け入れた場合、雇用率制度において、派遣先にも障害者雇用数が反映されるような仕組みを検討。

●中小企業における障害者雇用の促進
  現在、300人未満の企業は雇用率未達成でも納付金制度の適用除外となっており、雇用率の低下の一つの要因として考えられる。そのため、納付金の適用対象に中小企業を含めることを検討。

  上記はいずれも新たな働き方を生む可能性がある見直しであり、実は在宅勤務と組み合わせることで更に裾野を広げることができると期待しています。今後、十分ウオッチングをしながら、いうべき意見は出していきたいと考えます。

(堀込)

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保川さんの作業風景

保川 仁さん  (20代)
(脳性麻痺 1種1級)
(IT技術者在宅養成講座'06年修了)

株式会社富士テクノソリューションズ 管理本部経営管理部

入社時期
2006年4月
雇用形態
契約社員
勤務時間
10:00〜17:30 (1時間休憩含む)
就労場所
自宅
労務管理
WEB上の勤務報告システム利用
出  社
不定期
仕事内容
社内の管理システムの開発業務

 

Q:昨年の春に入社されて、あっという間に2年目突入。最近のトピックなどお聞かせ願えますか。

 実は、つい最近ですが、会社から「業務改善賞」をもらいました! 社内のeラーニングシステムを開発しまして、それに対しての受賞です。

Q:えっ? 2年目でもうそんな活躍を!? 一体どんなシステムなんでしょう。副賞はあったのでしょうか?

 はい、副賞もいただきましたよ(笑)。でも何よりも認めてもらったこと、評価してくれたことが本当に嬉しかったです。システムの内容は、簡単に言うと、まず社員が個人でログインして数問のテストを受ける。それによって現在の自分の知識がどれくらいあるのかを調べる仕様です。テストの問題はそれぞれの部署の担当者がデータベースに事前に入力するしくみになってまして、開発言語はPHPです。

Q:Q.なるほど、どんな会社でも利用できそうですね、ともかく、おめでとうございます! その他にもこの1年半で開発されたものはありますか?

 一番最初に作ったのが、在宅勤務者に便利なWEB勤務報告システムです。僕ともう一名在宅勤務者がいるので、会社のほうから依頼されて開発しました。記念すべき僕の初めての仕事です。
  最近取りかかっているのはキャリアアッププランのシステム。これも、社員が個人でログインし、自分のキャリアアップのための諸データを記録していくものです。佳境に入っていまして、会社とやりとりの毎日です。

Q:入社しての1年半は順風満帆という感じですね。

 いえいえ、時には仕事が空いてしまう時もあって、「給料もらっていいのだろうか」と悩む時期もありました。でも、時間がある時こそ本やネットで勉強できますから、今やっている仕事の基礎づくりにはなりました。当初は、開発の最初の段階で上司が仕様を決めて出してくれて、僕はそれに沿って作りこんでいくだけでした。
  eラーニングのシステムあたりから、大まかな話を聞いて、それをもとに自分で仕様を考えられるようになりました。
  1年半のそんなやり取りの中で、離れた場所で働く僕について、現在の力や可能性を会社がしっかりと把握してくれたと思います

Q:なるほど、いい関係を築いて来られたのですね〜。在宅勤務ならではの工夫と、あとに続く方へのアドバイスを最後にお願いできますか。

 会社とのコミュニケーションは上司が工夫をしてくれています。メールなどは早めに返事を打ってくれますし、一日の終わりの報告で「できなかったらどうしよう…」というような不安を書くと、「頑張れ」「息抜きは必要だ」と返してくれるので、在宅勤務でありがちなコミュニケーション不足はありません、めぐまれた環境だと感謝しています。
  僕自身の工夫としては、リフレッシュとして定常的に行っている犬の散歩と、車椅子サッカーでしょうか(笑)。とくに犬の散歩は重要ですね〜。これがないと本当に家からなかなか出ませんから。
  後輩へ言っておきたいのは、勉強は先々何でも仕事に役立つということ。学習当時は「こんなこと将来いらないんじゃないかなぁ」と感じたことでも、今思えば、「ほんとにやっててよかったぁ」、そんなことばかりですよ(笑)。

富士テクノソリューションズ
富士テクノソリューションズ


インタビューを終えて:

 正直言って「1年半で、しかも在宅勤務でこんなに成長できるものなのか」と、感激ひとしおのインタビューでした。あまり出社の機会はないとのことですが、会社の方との信頼関係は随所で感じられました。仕事に対する周りの評価がわかりにくいと言われる在宅勤務ですが、保川さんは体一杯、自分への期待度を感じ取っておられたように思います。
  お宅にお邪魔してまず驚いたのは、40インチのTVを贅沢にディスプレイとして使っておられたこと!的確な距離も取っておられ、作業環境としては最高ですね。一定時間で休憩を取ることもぜひ気をつけてください。今後も応援してます。

(堀込)

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 4月の改正障害者雇用促進法で、新たに「在宅就業障害者(以下、在宅ワーカー)」への発注奨励制度が創設され、この秋で1年半が経過しました。少しずつ広がりを見せるこの制度ですが、それでも「在宅就業ってなに?」「発注するとどんなメリットがあるの?」など、制度の仕組みやその意義について、もっと売り込んでいく必要があると感じています。そこで職能開発室では、より多くの方に在宅就業のことや発注奨励のことを知っていただくための広報冊子の企画・制作に取り組んでおり、現在その仕上げの真っ只中にいるところです。

 この冊子のタイトルは「Partners」。全国に15ある在宅就業支援団体と、各団体の「ウリ(=得意とする仕事)」を紹介するほか、俳優の柳生博さんや、発注実績のある事業主さまのインタビュー記事、そして在宅ワーカーの皆さんの素顔や日常を綴った特集など、たくさんの人が登場しています。冊子のタイトルには、そんな人たちとの「つながり」を紹介したいという願いも込められています。

 制作にあたっては、1ヶ月をかけて全国にある支援団体の訪問取材を敢行し、各地で活躍されている在宅ワーカーのみなさんや支援関係者の精力的な姿に触れるという貴重な体験をしました。また、それぞれが独自の構想と情熱を持って実践し、地域で大きな役割を果たしていることにも大きな刺激を受けました。

 そしてもうひとつ印象的だったのが、「少ない時間であっても自分の力を発揮したい」「いずれは個人事業主として起業・独立したい」といった在宅ワーカーの皆さんの「声」。ここ数年、雇用の分野では就職者数が年々増加しているという喜ばしい傾向にあるのですが、一方で「働くスタイル」は雇用に限らず、本人の希望に応じた多くの選択肢が用意されていてしかるべきです。その選択肢のひとつとして、在宅就業支援団体の存在と役割の大きさについても、「Partners」を通じて全国の方に感じていただければ嬉しく思います。

(吉田)

誌面イメージ
※在宅就業応援マガジン「Partners」は完成し、現在配布中です!
詳しくは以下のPartnersの紹介ページをご覧ください。
http://www.tocolo.or.jp/syokunou/partners.html

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 サポートセンターに来られる方々が一番「へぇー」を連発されるのは、福祉機器ではなく何と携帯電話です。
  例えば、この夏発売になったNTTドコモの「らくらくホン4」。新しくGPS機能がついており、今自分のいるところがバッチリ把握できます。
  従来から備えていたユニバーサルな機能とあわせると、以下のようなことが可能になるのです。

○初めての訪問先、でも場所がわからない!
  最寄駅から歩いてみたんだけど、迷ってしまったみたい。そんな時、らくらくホン4があれば、まず、今の自分の位置を把握できます。音声で住所を読上げてくれますし、地図でも見られます。
  そこから行き先までどれくらいかかるのかを調べることもできますから、「ちょっと遠いわ」という時は、最寄りのタクシー会社を調べて電話をかけることも簡単。 全て音声で読み上げます。


○キャー、非常事態!
  怪しい人につけられている、見ず知らずの人達に取り囲まれた…。
  そんな時は怖くて声も出せません。ワンタッチアラームの機能で、まずは大きな音を出し威嚇。と同時に、自動的に事前登録しておいた家族へ、今いる住所が緊急メールとして届きます。

 その他にも、手話でテレビ電話、拡大鏡で文字拡大など多様な機能が準備されています。また別の機種では、スイッチを接続することで、指一本、あるいは目のまばたきで、メールを作って送ることが可能になっています。

 これはもう福祉機器? もしかしたら福祉機器以上かも? どうぞサポートセンターにおいでいただき、皆さんの目で確かめてください。

(堀込)

●東京都障害者ITサポートセンター http://www.tokyo-itcenter.com/
 電話:03-3208-0471  FAX:03-3208-047

 

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 本誌でもたびたび講習の様子や「おめでとう」コーナーに受講生の試験合格などを掲載しております「IT技術者在宅養成講座」では、今年も受講生を募集しています。この講座は、2年後の就労を目指し、必要なIT技術や仕事の進め方を自宅で学ぶもので、来年で19年目を迎えます。
  受講対象は身体に重度の障害のある東京都在住の方で、申し込みは12月25日までとなります。みなさま、どうぞ奮ってご応募ください!!
詳細は以下のサイトをご覧ください。

(岩田)

●「IT技術者在宅養成講座」20年度募集要項
  http://www.tocolo.or.jp/syokunou/kyoiku/boshu.html

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◆株式会社ベイカレント・コンサルティング にて在宅勤務決定
  K.C さん 疾患 1種2級
(IT技術者在宅養成講座 2008年修了予定)

イラスト1
   

◆マイクロソフトオフィススペシャリストExcel2003 Expert合格
  S.Y さん 疾患 2種2級
(IT技術者在宅養成講座 2008年修了予定)

   

◆マイクロソフトオフィススペシャリストWord2003合格
  K.T さん 脳性麻痺 1種1級
(IT技術者在宅養成講座 2008年修了予定)

イラスト3
   

 



編 集 後 記

 「確かな未来は、懐かしい風景の中にある。」取材中にある俳優さんが語った言葉です。その風景を減らし続けたツケのひとつが、この夏の猛暑であったように思います。でも、困難を乗り越えることができるのも人間の連綿とした英知であるはず。「塵も積もれば」まさに懐かしい「山」が蘇ります。

(吉田)

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