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重度障害者の在宅就業において、福祉施策利用も視野に入れた就労支援のあり方に関する調査研究

4.2  シームレスな労働:雇用と福祉的就労

 前述した権利条約の視点や、日本が1992年に批准した、ILOの「職業リハビリテーション(障害者)に関する第159号条約」などの水準からすると、わが国の福祉的就労の実態には大きな矛盾があることも指摘されている。

  2007年8月、全国福祉保育労働組合は、「日本の障害者雇用施策は第159号条約違反である」としてILOに提訴した。旧法の授産施設や障害者自立支援法の「就労継続支援事業B型」などでは、労働法規が適用されずに「訓練」と位置付けられ、利用料まで徴収される。これは、職業リハビリテーションを無料とする第159号条約の趣旨に明らかに違反する、などの主張である。2009年3月にはILOから回答があり、「授産施設等での就労を妥当な範囲で労働法の範囲内に収めることは極めて重要」であり、「無償であるはずの職業リハビリテーション、就労継続支援事業B型での利用料徴収に繰り返し懸念を表明する」などの指摘がなされた。すなわち、わが国の福祉的就労も労働行政の対象として、労働基本権や最低賃金の保障について検討すべきであるとの認識を明確にしたのである。

 わが国では、障害のある人の「労働」が、旧労働省管轄の「雇用(一般就労)」と、旧厚生省管轄の「福祉的就労」とに二分され、その間に大きな溝があることは以前から問題視されていた。こうした課題を解消するために、2001年1月、厚生労働省への統合が行われたはずだが一向にその溝は埋まっていない。むしろ障害者自立支援法で拡大されたという見方が一般的である。国際的な動向を踏まえ、「福祉的就労」の場に労働法規を適用し、ヨーロッパの「保護雇用」的な位置づけをめざす、といった検討も現在進められている。それゆえ、障害者の労働に関しては、今、「シームレスな(継ぎ目のない)働き方」に注目が集まっている。

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