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■重度身体障害者の在宅就労を考える
トライアングル
機関紙『トライアングル』は三菱商事株式会社様のご協力により発行しております。

Vol.38
CONTENTS 2006.7(平成18年)

■在宅就業支援団体になりました

■障害をもつ方の在宅勤務事例

■es-team全体ミーティング開催

■Webアクセシビリティセミナー開催!

■おめでとう

  前号でもお伝えした改正障害者雇用促進法がこの4月に施行され、これまで雇用という形での支援策が中心だった在宅就業分野において、非雇用(請負)で働いている方(在宅ワーカー)にも新たに仕事の発注奨励策が生まれました。

 この法改正にともない、事業主からの発注をとりまとめ、その業務に適した在宅ワーカーへ仕事斡旋を行う「在宅就業支援団体」制度が創設されることになり、当事業所はこの4月、その団体として正式に登録されました。 (登録番号:第1300001号)

 この支援団体を通じて在宅ワーカーに仕事を発注する企業は、障害のある方を雇用した場合と同じように、障害者雇用納付金制度における特例調整金・特例報奨金を受給できるようになります。社会的責任(CSR)への関心が高まり、雇用に前向きな取り組みを始める企業が増えてきた昨今、事業主の方々にとっては気になる制度となるでしょう。また一方で在宅ワーカーにとっても、働く機会の増加や、より質の高い仕事の受注が予想され、スタッフ一同大きな可能性を感じております。この両者をサポートする重要な枠組みを担うのが当事業所をはじめとした在宅就業支援団体ですが、現在登録は全国で8団体とのこと、今後の増加が待たれます。

 さて、スタートラインに立ったばかりのこの新制度なが ら、すでに多くのお客さまから歓迎する声をいただいております。私どもはその期待に応えるべく、日々の営業活動にさらに研鑽を重ねていく所存です。

 制度としての課題は当然これから見えてくると思われますが、これを機に、外で働きたくても働けない人に目が向けられ、その人にあった働くスタイルというものが尊重されることを希望します。そして、同時にそのスタイルを発注サイドと支援団体の双方からバックアップしていける仕組みが芽生えつつあることに、今何よりも大きな意義を感じています。

(吉田)


※詳細は厚生労働省のサイトをご参照ください
●http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/ 「障害者雇用対策」

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本間さんの作業風景

本間 一秀さん  
(脳性麻痺1種1級)  
(IT技術者在宅養成講座 '97年修了)

テクノツール株式会社
 ソフト開発部 勤務

入社時期
1997年(契約社員からのスタート)
雇用形態
正社員
勤務時間
9:30〜18:30
就労場所
自宅
出  社
不定期
仕事内容
WEBプログラミング、DBを中心としたシステム開発

 今回は在宅勤務9年目に突入されたテクノツール株式会社の本間一秀さんにご登場願います。

  1997年に契約社員で仕事を開始され、その後、本採用になって7年。このコーナーに登場してくれた方の中でも、間違いなく在宅勤務についてはバリバリのパイオニアでしょう。

 継続のコツ、うかがってみました。

 

 

Q:お久しぶりです、さっそくですが現在のお仕事を教えてください。

 ネット上の弊社モールのシステム開発や、外のお客様からいただく依頼でソフト開発をやっています。利用言語は、モールはPHP、顧客管理のデータベースなどはVB(Visual Basic)を使っています。

Q:仕事の量は一定ですか?ゆるやかな時はどんな工夫をされていますか。

 新しい仕事が来るまでの谷間は新しい技術などをおっかけたりしています。
 情報収集はもっぱらネット上のサイトや雑誌からですね。現在は、ネット上でリアルタイムに表計算ができちゃったりするAjaxが面白い。とにかく時間があれば、興味を持ったことを調べたりしています。

Q:在宅での開発のお仕事はどのような方法で進めていかれるのですか。

 まず上司から直接メール又は電話で受けます。その仕事の担当SEと直接打ち合わせをすることが多いですね。大体は僕が会社へ行きますが、担当SEが僕の自宅に来ることも。打ち合わせ後は、メールや電話でのやりとりがほとんどです。開発中に出てきた疑問や細かい確認もメール、電話、FAXでしますが、解決しないときはやっぱり会ってフェイス・トゥ・フェイスで解決することになります。

Q:9年間の中で思い出すピンチがあれば教えてください。

 技術面でのピンチはいつもです!(笑)。一人で悩んでしまうクセがありまして。「こんなことくらいで相談するのは気が引ける…」と思っちゃうんですよね。

 あと、在宅だと会社の雰囲気がつかめない。社内でどういうことが起こっているか、とか。

 自分のペースでやっていると、仕様についてのドキュメントはあっても、思い込みで微妙な食い違いが起こってしまうことあるんですよ。

Q:なるほど、在宅勤務の方がよく悩みとしてあげられることの一つですね。さて、では仕事の醍醐味は?

 一つのプロジェクトが終わってお客様の生の反応が返ってくる時でしょうか。クレームもありますが「OK」を聞くと安心します。

 最近感じるのはお客様から要求される製作側への期日のスピードが速くなったこと。「これくらいの期間でできるでしょう」という要求です。そういう意味では、ユーザーも情報が増え技術が上がっていますから、その分こっちもね、頑張らないと(笑)。

Q:さて、今後の本間さんは?

 仕事面では、さきほどお話したAjaxなんかやってみたいですね。

 プライベートでは何だろうなぁ。平日は、仕事終わるとビール飲んでテレビ見て風呂入って寝るだけですからねえ(笑)。土日は隔週ですが地域のNPOの活動やってます。障害のある方々にパソコンの基本やエクセル、ワードなんかを教えたり。受講生がわかっていく様子を見るとうれしいですね。「理解してくれた」という実感があります。こうした活動もこれから楽しくやっていきたいですね。

Q:あとに続く方々に恒例のアドバイスを!

 何かひとつの目標をみつけ、それに向かっていくことが大事。それと、自分のレベルを高めていくことを怠らないこと。「このくらいでいいかな」って線を引かないで進んでいくと、振り返ったら新しい技術が吸収できていること、よくありますよ。

 

株式会社テクノツール様のウェブサイト
テクノツール株式会社様のウェブサイト


インタビューを終えて:

 最近ある機関誌で「板橋区に障害者IT支援のNPO」という記事を見つけ気になっていた筆者ですが、その講師が本間さんだったとは! 巣立った修了生さんがこうして地元で皆さんに技術を還元していることは本当に誇らしく、うれしいことです。

 本間さんはコロニーの在宅パソコン講習を受講する前から独学で情報処理を学んでおられましたが、その探究心は10年以上たってもちっとも変わっていませんでした。

 先月シドニーに行かれたそうで、街や人のバリアフリー度を語る視線は頼もしい限り。NPO活動も体に気をつけて頑張ってください!

(堀込)

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es-team全体ミーティングのようす

 日ごろは自宅などで働くes-team(エス・チーム)メンバーが年に一度、一同に会し、その年度の方針を確認し、互いの近況を報告しあうための全体ミーティングが、昨年に引き続き開催されました。

 今回のミーティングでは、「数字で知るes-team」を意識し、前年度の実績や受注した仕事の内訳、お客さまの動向などを紹介し、これらの情報を共有したうえで、今年度の方針や、個々がめざすべきことを確認しあう場としました。また、前項の在宅就業の新制度開始などに伴い、お客さまとの関係も今まで以上に重要になることから、今回はゲストの方2名をお招きし、それぞれお話を伺いました。

 山野美容芸術短期大学名誉教授の森清氏からは、es-teamの活動や方針について、御著書でも紹介してくださった視点から、障害のある人のはたらく環境などを体系的に論じ、「得意な仕事で働きやすい働き方を工夫し」、「元気に、したたかに」との暖かいメッセージで結んでくださいました。

 また、日ごろWebサイトの制作でお世話になっている「(財)日本野鳥の会」の中村聡氏は、イラストやボードをふんだんに使い、さながらバードウォッチング教室のような雰囲気の中、野鳥の会の活動や目的をご紹介いただき、そのうえで私たちが提供しているWebサイトがその中でどのような大切さをもっているか、es-teamに対する期待をこめて語ってくださいました。

 参加したメンバーは、お二人の話を楽しみながらも緊張をもって受け止め、最後は「お客さまと自分たちの間に仕事がある」「自分たちの仕事を見ている多くの人たちの存在をもっともっと意識したい」などの声もあがり、一同が気持ちを新たにした一日でした。

(吉田)

<参考>
●森清先生の著書  「働くって何だ」−30のアドバイス (岩波ジュニア新書) 
http://www.iwanami.co.jp/hensyu/jr/toku/0604/500533.html

●財団法人 日本野鳥の会 http://www.wbsj.org/

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セミナーの様子

 4月18日(火)、ちよだプラットフォームスクエアにて、es-team(エス・チーム)が企画したセミナー「Webアクセシビリティ入門編」が開催され、仕事をしていくうえでこれらのスキルアップを必要とするチームのメンバーはじめ、IT技術者在宅養成講座の修了生、東京コロニーの職員など、定員の20名を上回る参加者を集めて開催されました。

 講師にはWebアクセシビリティの第一人者、植木真氏(株式会社インフォアクシア代表取締役)をお招きし、約3時間にわたり話をしていただきました。講義は「Webアクセシビリティの概要」「ユーザ特性」「SEO対策との共通点」などの概略を柱とした展開の中、一貫して「なぜ、この技術が必要なのか」に焦点をあて、スキル提供者の立場に立った貴重なアドバイスがこめられていました。最後は事前に参加者から集められていた質疑についても具体的な回答が用意されていて、入門編とはいえ、非常に欲張った内容のものとなりました。

 実はこのセミナー、アクセシビリティを日々学んでいるes-teamのメンバーが、さらに認識を深めたいという思いをもったのがきっかけ。セミナーの計画から、講師とのコンタクトなど、開催に向けた準備もメンバー自らが行いました

 雇用・非雇用にかかわらず、在宅で働く際のひとつの課題として、就労を継続していくために必要なリテラシーやスキルのアップを、個人レベルでどのように身につけていくかということが挙げられます。

 こうしたセミナーがそれらに応じうる選択肢のひとつとして役立ち、そしてお客さまや関係者の方に喜んでいただける仕事につながるのであれば、今後もこうしたセミナーを続けていきたいと考えています。

(吉田)

●株式会社インフォアクシア http://www.infoaxia.co.jp/

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◆株式会社 はなまる にて在宅勤務決定
  I.K さん 疾患 1種1級
  (IT技術者在宅養成講座 2006年修了)

◆株式会社富士テクノサービスにて在宅勤務決定
  Y.H さん 脳性麻痺 1種1級
  (IT技術者在宅養成講座 2006年修了)

◆初級システムアドミニストレータ試験 合格
  H.N さん 関節リウマチ 1種1級
  (IT技術者在宅養成講座 受講中)

◆マイクロソフトオフィススペシャリスト試験 Word2003 合格
  T.R さん 脳性麻痺 1種1級
  (IT技術者在宅養成講座 受講中)



編 集 後 記

 サッカーW杯も終わりましたね。実はちょうど4年前のこの編集後記で「W杯チケット、ネット限定販売に抗議」の話を書いたことを思い出しました。

 当時の日本のネット人口は約4000万人、今年度はその倍にせまる約7500万人。ブロードバンド率に至っては、18%から72%へジャンプです。4年ひと昔、なかなか感慨深い数字です・・・。

(堀込)

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