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■重度身体障害者の在宅就労を考える
トライアングル
機関紙『トライアングル』は三菱商事株式会社様のご協力により発行しております。

Vol.48 
CONTENTS 2009.11(平成21年)

■研究事業開始しました

■障害のある方の在宅勤務事例

■第5回es-teamミーティング開催

■「チャンピオンズ オブ デジタルリテラシー」という賞をいただいて

■海外研修生のご見学 〜IT技術者在宅養成講座〜

■おめでとう

 前号記事「この先どこに向かうのか? 在宅就業支援制度」でも紹介したとおり、2006年に障害者雇用促進法に盛り込まれた在宅就業支援制度は、3年を経てさまざまな課題が浮き彫りになってきましたが、一向にその対策が進まないという状況下にあります。

 一方で「たとえ通勤や通所ができなくても、働く時間が短時間であっても、身の丈にあった就労をしたい」という声は日を追うごとに増え、もはや待ったなしの状態といっても過言ではありません。

 SOHOという就労形態に着目し、東京コロニーが立ち上げた在宅就労グループ「es-team(エス・チーム)」も9年目を迎え、運営のありかたの転換期を迎えているように思われます。フリーランスとして独り立ちを望む方のほか、一般就労へのステップとして利用する方、とにかく働く経験を重ねていきたいという方など、直面するニーズは極めて多様化しています。

 こうした中、東京コロニーでは、厚生労働省障害者保健福祉推進事業の調査研究公募において、標題のテーマで研究実施に名乗りをあげ、今年度の事業受託の決定を受けました。

 このテーマの主眼は、福祉就労の担い手である就労継続支援や就労移行支援事業において、在宅就労を制度的に可能にするための道を探ることにあります。が、その先には、在宅就業支援団体に加えて、福祉施設等が地域における在宅就労支援の担い手となり、横断的なサービス利用を可能にすることで、より個人にあった働き方ができる社会の実現に貢献したいという思いを込めています

 幸いにも他団体や当事者の方、心強い委員会メンバーの賛同と協力が得られ、順調なスタートを切っています。引き続き、各位のご協力・ご指導をお願い申しあげます。

(吉田)

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國重 義樹さん  (40代)
(疾患による体幹機能障害 5級)
(WEB制作短期講座2008年終了)

双日株式会社 人事総務部採用課

入社時期
2007年12月
雇用形態
契約社員
勤務時間
9:15〜17:45
就労場所
自宅
労務管理
毎日の開始と終了時の電話 終了時にはメールで日報送信
出  社
2か月に1度程度
仕事内容
人事総務部内における書類作成及び情報収集


 今回は、総合商社双日様の人事部門で、新卒採用のための業務に励む國重さんのご登場です。國重さんは、2007年に東京コロニーの短期講座に入講され、間も無く双日様に在宅勤務でご就職。会社のご了解をいただき、その後も応用講座を最後まで受講された努力の方です。商社という舞台で、一体どんな在宅勤務をしていらっしゃるのでしょうか…。

 

Q:まず國重さんの障害状況と、それゆえの仕事上の工夫などお教えください。

 わたしの障害は、大まかに言うと筋肉が不随意に収縮していく病気です。収縮し続けるということは、普通の方の感覚で言えばずっと重いものを持っている感じ。横になるとそれが安まるので、仕事は1時間起きて作業しては1時間寝る。この繰り返しです。

 工夫と言うほどのものではないですが、仕事は緩急をつけて集中の仕方を変えます。起きている1時間で書きものやパソコン作業をし、横になる1時間で考える作業、まとめる作業を行います。これが案外うまくいくことに気づき、「仕事ってやり方だなぁ」と思ってます、まあいずれにせよ在宅勤務のなせる技ですが。

Q:制約ゆえの集中、ですね。なるほどわかるような気がします。ミーティングなどはどうされてますか?

 2か月に1度程度ですが、出社または会社のほうから家に来てくれることもあります。仕事のことはもちろん、体のこと、生活のこと、色々話せます。出社の時は車を運転して行くのですが、体を休めるために駐車場の車中で横になる時間ももらっています。会社では、出社していないとわからないような情報を上司ができるだけ話してくれます。こういうことが本当に嬉しいですね。

Q:仕事の概要を教えてください。

 大きくは2つ業務があります。1つはダイバーシティに関わるもので、社員の育児や出産、介護等についての制度をわかりやすく社内にPRする業務。もう1つは、新卒採用のWEBページ作成のため、他社の情報を集める業務です。学生さんには一生のことですから、ちょっとでも自分にあったよい会社に巡り合いたい。現在彼らが就活にかける時間はものすごく大きいと言われています。そこで、少しでもわかりやすい魅力的なWEBにできるよう、たとえば、学生さんに人気のあるサイトの上位を分析・評価して社内に伝えるなど、外からの情報収集で後方支援するわけです。

 この情報を加味していただいたせいか、今回できたうちの採用のページが実はすごくいいんですよ!少しは役に立てたのかな、と思うとやりがいがありますね。

Q:確かに就職活動におけるネットの利用は、求人側も求職側もその比重がどんどん上がりますね。さて、次にお仕事の課題などあったらお聞かせ下さい。

 うーん、課題と言うか、やりたいことはたくさんあります。ただ、今の体の状態では精一杯というのが正直なところです。会社もそこはよくわかってくれています。まずは体も仕事も良い状態を目指して、働きながら治療をさぼらず頑張る、これが今の自分の最大の課題でしょうか。

Q:治療と仕事、在宅勤務でそれらが両立できていることは、とても大きなことなのですね…。では、後に続く皆様へアドバイスをいただけますか?

 私が言えることは、机上の勉強も大事だけど、ともかく「色んな人と色んな話をすること」。在宅勤務だからこそ余計にそう思います。信頼感を持ってもらえることのスタートはコミュニケーションです。そして自分を助けるのもコミュニケーション。たとえば、わたしも自宅での一人の作業の中で落ち込むことがあります。仕事の量が少なく、会社からの連絡が少なめになった時など、不安にもなります。そんな時は逆にこちらから「どんな具合ですか?」とあえて電話するようにしてきました。

 上司や同僚も配慮をしてくれて、仕事開始や終了のメールも「始めます」「終わります」だけのやりとりでなく、日常の話をみんな書いてくれます。最近だとテレビドラマの「不毛地帯」。あれは商社の話なんで、結構盛り上りますね(笑)。社内報を送ってくれる際も、同僚がちょっとしたメモをつけてくれることがあり、そういった心遣いがうれしいですね。

 こうした潤滑油が、仕事の効率や精神上のモチベーションに大きく左右することって意外とあるんじゃないかなと思います。出社した時は、同僚の趣味なんかを自分も積極的に聞いてます、変に思われない程度にですが(笑)。社会には色んな人がいます。親戚のおじさんでも何でもいいので、人と話すことに慣れることが大切だと思います。


インタビューを終えて:

 一連の業務をうかがって、「参謀のようなお仕事が似合いますね」と言うと、「いや、本来は現場で体使いたい方なんですよ」と照れくさそうに笑った國重さん。かつて営業をされていたキャリアが、今のお仕事を間接的に後押ししているのがよくわかります。

 総合商社というのはスケールの大きな仕事が多く、海外勤務の方も含めとかく皆さん忙しそう。会社側の配慮が、社員一人ひとりにまで到底届かないような勝手なイメージがありましたが、お話をうかがうと、なんとも細やかに國重さんの体の状況や気持ちを把握なさっておられました。

 時代は確かに大変な「不毛地帯」ですが、いつか来る収穫多き日を期して、お互い頑張りましょう。ご活躍をお祈りしています!

(堀込)

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写真 「SOHOセキュリティ」にむけた講義のようす
「SOHOセキュリティ」にむけた講義のようす

 在宅就労グループ「es-team(エス・チーム)」では、今年で5回目を数える「es-teamミーティング」(6/24実施)において、「SOHOにおける人権とセキュリティ」と題した講義を行いました。

 講師としてお招きしたのは、(株)インターネットプライバシー研究所・代表取締役の木寛氏。インターネット社会の草創期より情報セキュリティや個人情報保護の社会的ニーズに着目し、企業向けのセキュリティマネジメント等のコンサルタントとして幅広く活躍されている方です。

 今回の講義では、「基本的人権」「個人の尊厳」といったキーワードを用いて、情報セキュリティの根源的な背景まで掘りさげるところからスタート。そして、これらの侵害によっておこる社会的影響や損失についての事例紹介、そしてこうした背景から生まれた個人情報保護の必要性とその考え方について展開し、最後は「SOHO事業者の立場で何を実践すべきか?」についても指南を与えてくださり、SOHOという形態によってサービス提供者の側に立つ在宅ワーカーに対し、どのような意識と役割が求められているか? について、わかりやすく丁寧にご講義くださいました。

 どんな仕事であれ、お客さまやお取引先から仕事を請ける際には何らかの情報をお預かりすることになり、機密保持や情報保護の実施、そしてそのためのセキュリティ対策を講じることは、SOHOグループという形態であっても当然に課せられるものです。es-teamでは従来より、在宅ワークにおける情報保護の取り決め、独自のガイドライン策定、シートなどを使ったチェック機能づくりなどの対策をはかってきましたが、今回たくさんのヒントをいただいたことに加え、折しも東京コロニー全体がプライバシーマークの取得に向けて本格的な取り組みを進めている時期でもあり、これを機に在宅ワークにおける情報セキュリティの確立とよりよいサービスの提供に向けて、さらに実践を重ねていきたいと考えています。

(吉田)

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写真 受賞者5名
受賞5名。右から2番目が拙者

 2009年8月初旬、アメリカのサーチポート社が行う「PATHWAYS 2009」という会議にて、掲題の表彰にあずかりました(場所:ヒルトン・トロント)。

 この会議は、一言でいえば、この会社がワールドワイドで行っている資格試験を更に推進するために、尽力しているパソコンスクールを世界中から招待し称えるものです。しかしそれだけにとどまらず、IT技術やライセンス取得が社会に対してできることを追及し、教育や経済活動の中でIT利用の格差縮小の支援をしている人などに対しても3年前からこの表彰を行うようになりました。偶然にも、2008 年、東京コロニーが運営する東京都障害者IT地域支援センターを訪ねてくださったオデッセイコミュニケーションズ様)が、センターで障害のある方の資格試験の支援やIT基礎教育を行っているのを知りノミネートしてくださったことが今回の幸運につながりました。

 上記の表彰者を含め、世界35カ国・地域の約200名を超す参加者は全てが招待。ライセンス取得の意味や正当性を掲げて大会を盛り上げ称えあうことは、次の取得者獲得につながるだけでなく、格差縮小という目標にも少なからずスポットがあたっていくことでしょう。

 活動にご理解をいただきこの栄誉を与えて下さったオデッセイコミュニケーションズ様はもちろん、"IT 利用で社会参加"という東京コロニーの思いを支え続けて下さった全ての方に感謝をし、またここから一歩ずつ着実に歩き出したいと思います。

(堀込)

(注)株式会社 オデッセイ コミュニケーションズ
サーチポート社と提携し日本でコンピュータを使った資格試験の実施・運営を行う

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写真 受講生の自宅にて
受講生の自宅にて

 総合福祉施設アガペセンターの交換研修プログラムの一環として、2名の研修生(タイ1名、中国1名)が見学に来られました。東京都障害者IT地域支援センターをご覧いただいた後、「IT技術者在宅養成講座」の受講生の自宅への訪問指導にも同行していただきました。

 タイの研修生のジャさんは自国でIT講師をしているだけに、講座で使うテキストの数々を手に取りながら受講生とIT話に花が咲き、即興でプログラミングの問題を出されるなど大いに盛り上がりました。自らも障害があるジャさんは、遠く離れた異国にも同じようにITを身につけて就労を目指す仲間がいることに大変感激されたようでした。

 受講生にとっても、事前に調べた挨拶「サワディ」で出迎えたり、見学後はメールのやり取りをしたりと、国際交流を大いに楽しんだ様子でした。

(岩田)

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◆調布市役所(東京コロニー嘱託) にて勤務決定
 Y.H さん 疾病 5級
(職業紹介事業 2009年登録者)

Y.Hさん
   

 



編 集 後 記

 Windows7の話が巷に流れ始めました。Vistaの発売時とはちょっと雰囲気が違うようです。そういえば、Windows95発売前夜、お店の前に列をなしてカウントダウンをした人もいましたね。そうそう、わたしもその一人。若かったんです、わたしもWindowsも。

(堀込)

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