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■重度身体障害者の在宅就労を考える
トライアングル
機関紙『トライアングル』は三菱商事株式会社様のご協力により発行しております。

Vol.54 
CONTENTS 2011.11(平成23年)

■おかげさまで60周年

■障害のある方の在宅雇用事例

■es-teamメンバーによるブログ 「ワーカーの素顔」開始しました!

■シリーズ第16回 東京都障害者IT地域支援センター便り
 「FAX版 東京都障害者IT地域支援センター通信」始めました!

■チーム「智恵の和」 ETロボコン東京大会に出場!

■おめでとう

おかげさまで60周年

 社会福祉法人東京コロニーは本年で60周年を迎えます。結核回復者の人たちが社会復帰の場として事業を開始して以来、本当に多くの方々のご指導、ご支援をいただいてまいりました。改めて感謝し、心より御礼申し上げます。

 現在、東京都内4区・7市の20ヶ所の事業拠点で、655名(内障害のある方378名)が働いていますが、障害や疾病によって通勤・通学ができない方のために、1989年よりITを中心とした在宅での教育や就労支援を行ってきたのが私ども職能開発室です。
 変わりゆく時代の流れを捉え、現在は次の4つの事業が業務の柱となっております。

◇在宅IT教育事業(1989年〜)
 二年間の本格的なIT技術者養成のカリキュラムが在宅で受けられるのが特徴です。遠隔教育ですが、在宅勤務を想定したグループワーク等が高い効果を生み、巣立った百人を越す修了生のうち、半分以上が企業での在宅雇用となっています。

◇SOHO支援事業(2002年〜)
 就職は難しくても、在宅での受託作業なら体調に合わせて働けるという方々を対象に、IT関連の仕事斡旋を行うしくみです。2006年に東京都では唯一「在宅就業支援団体」に認可されました(登録番号:第1300001号)

◇職業紹介事業(2000年〜)
 在宅雇用を前提に、事業主と障害のある方を結び付ける事業です。雇用関係給付金を取扱い、毎年6人〜10人程度が在宅での就職を果たしています。また、公的機関等を対象に在宅雇用セミナー講師も担当しております。

◇東京都障害者IT地域支援センター事業(2006年〜)
 障害とIT利用に関する相談一般を受けつけており、毎年1500名以上のご来場です。開始当初は障害当事者の方が中心でしたが、現在は障害者を雇用する企業の方やソフト開発者など利用は多岐にわたっており、自治体の職員の方々との連携も多くなっています。

 更なる技術の進歩や労働法改正が予想されるこの先の十年に目をやれば、益々皆さまのニーズにお応えしなければならないのが職能開発室だと肝に銘じております。改めて、どうぞ今後ともよろしくお願いいたします!

(所長 堀込真理子)

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株式会社TBSテレビ様
株式会社TBSテレビ様
http://www.tbs.co.jp/

田中 久美子さん (30代)
(てんかん 2級)
(職業紹介事業 2011年登録)

株式会社TBSテレビ 技術局付き



仕事開始時期
2011年8月
労働形態
雇用(嘱託)
就業時間
10:00〜18:00
仕事内容
データ作成および管理
就労場所
自宅

 今回は、トライアングル読者の方にはお馴染みのTBSさんの在宅勤務事例です。
 これまでは番組考査的な業務のご紹介が多かったTBSさんの在宅雇用ですが、田中さんは過去の仕事経験をフルに活かして、EXCEL(エクセル)などの実務的な作業が中心とか。
 テレビ制作と言うととかくキラキラしたイメージがわくものですが、その影で一体どんな実務をなさっているのか、お仕事終了後の田中さんを直撃しました。

Q:入社なさって3カ月めですね。まずはお仕事の概要を教えて下さい。

 現在は、わたしの所属する技術局の中の2つの部署の仕事をしています。一つはシステム部で、社内のパソコン状況の管理をしています。例えば、社内中のPCの最終ログイン状況やウイルスチェック状況など。

 これらを一覧にしてまとめておくのは大事な仕事です。またもう一つはCG部の業務で、DigiCon6(デジコンシックス)という映像クリエイターたちを応援するサイトの作業です。

Q:2つの部署から仕事が来るとなると、在宅作業で見えないだけに、双方の作業量のバランスなど大変ではないですか?

 その辺は最初から配慮してもらってまして。週一回、仕事実績を双方の部長に提出していますので、調整はうまくいっています。

Q:なるほど。お話変わりますが、障害についてお聞かせ下さい。「てんかん」という障害はまだまだ知られていない部分もあると思います。田中さんのここに至る経緯を教えて下さい。

 はい。まずは小学校の頃、呼ばれてもぼーっとして反応が無い時がたまにありました。薬を飲んで中学では直ったと思っていたのですが、高校、大学でも時折意識が無くなり倒れました。でも、ずっと貧血と思っていて病気だとは思いもしませんでしたから、大学を出て普通に就職しました。その後、ひと月に何度か倒れるようになり、救急車を呼んでもらうような状況も。風邪で内科に行った際に「脳神経外科へ」と言われ、病名がてんかんだとわかりました。

Q:長い間大変でいらっしゃいましたね。危険なことも多かったのでは?

 そうですね。例えば、電車の通勤途中で意識を失いました。気が付いたら降りるはずではないところに降りていて。多分乗客の波の中にのまれたのでしょうね(笑)。

 仕事中にオフィスの椅子のまま横に倒れていたこともありました。まわりは相当ビックリしたと思います。仕事は続けたかったけど、段々と通勤が本格的に危なくなり退職しました。医者に言われて障害者手帳を取り、在宅勤務かあるいは通いやすい仕事を探しましたが、なかなか見つかりませんでした。

Q:その後、しばらくSOHOをなさったのでしたね。

 ええ、半年くらい。ネットで探しました。それまでの会社でマーケティング業務をやっていたので、データの集計等に関数やVBA、マクロなどを活用していました。それをベースに、エクセルでのアンケート集計作業などの仕事を単発でもらいました。

 でも、定期的には来ないし、長く安定して仕事がしたいという思いは強かったので、今の会社に就職できたことは本当にありがたかったです。

Q:今の会社でのお仕事で、やりがいを感じることと課題を1つずつ教えて下さい。

 まだ3カ月なので大したことはできていないのですが、マクロなどでデータ集計の効率アップに取組み、OKをもらった時は嬉しかったですね。課題というか一番悔しいのは、セミナーのテープ起こしの作業がやりきれてないことです。映像の単語など業界的なものが多いので、知らない言葉ばかりでうまく聞き取れないのです。今、専門の本を読んで知識不足を補うようにしています。部長は、「いきなり難易度の高いものでゴメン」と言ってくれますが、今後はやれるようになりたいし、新しいことを覚えたいです!

Q:頼もしいですね。さて、最後になりますが、今後のご自身の希望と、田中さんに続く方たちへのアドバイスをよろしくお願いいたします。

 通勤してた時は、「今日は大丈夫だった?」と家族やパートナーがいつも聞きました。今はそんな心配をさせることもなく、なおかつ「働いている」という実感がある。ありがたいです。そうした気持の余裕からか、よく眠れるようになり、発作も減ったように思います。その分、わたしはTBS社員として裏方で支えたい。放送には直接携わることはできないし、家からではありますが、パソコン関係の分野では「何でもサポートできる存在」として頼ってもらえるようになれれば、と思ってます。

 仕事を探している時、在宅ワークを提供するサイトや派遣会社などで、暗に「精神障害の手帳の方は難しい」という不合理な対応を受け、「わたしは働ける状態にあるのに、一人ひとりを見ていないな」と感じました。今そういう苦しい状況にある方もおられると思います。でも、仕事は必ずあります。まずはあきらめないでほしいです

 

インタビューを終えて:

 お会いするたび、ふわぁーとした暖かい空気でこちらまでゆったりした気分にさせる田中さん。でも、避けることができない発作を抱えておられますから、普段の生活の大変さは推して知るべしです。周囲の方の日々の支えを受けながら、できることに確実に挑んでいく姿は、そのふんわりした空気とはまた別の強さを感じます。
 就活の時は暑い暑い夏でした。田中さんの御自宅から移動の都合のよい街を選んで、会議室を借りて2人で研修しましたねえ。1年経ったら、あそこでまた次のステップの研修をしましょう!

(堀込)

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ブログ「ワーカーの素顔」
「ワーカーの素顔」
http://www.es-team.net/blog

 在宅就労グループ「es-team(エス・チーム)」の登録メンバーは現在14名。その就労形態は、雇用でも施設利用でもなく、いわゆる請負契約ということになります。仕事を委託している間のみにおいて成立する関係であり、その仕事についても、スケジュールや就労場所などは本人裁量にゆだねるのが原則で、労務管理や支援計画も不要な世界、という特徴があります。

 しかしこれらは極論であり、むしろそういう前提にあるからこそ、仕事を通じてお互いの顔が見える関係性が重要だと考えます。たとえば「無理なスケジュールを組んでいないか」「技術面で困ったときは?」「○○さんをフォローして!」といったような互助の仕組み。衛生上の留意点や安心して働けるための契約などの独自ルール等々。こうしたさまざまな工夫のうえに、es-teamのグループワークによる成果が現れているようにも思います。

  このような中、Webサイト内において、ブログ「ワーカーの素顔」がこの7月に開設され、持ち回りによるメンバーの記事が週に一度掲載されるようになりました。その内容は、仕事に限らず、日々のこと、思うままのことが自由なスタイルで綴られています。

 もともと、es-teamのサイトは、業務内容や成果物のPRを主として開設された経緯があり、仕事のプロセスやそこで働く人たちのことには意図的にあまり触れてきませんでしたが、一人ひとりが違う働き方、考え方を持ち、そして障害や疾病等による就労の制約がありながらも、それぞれが身の丈にあわせながら仕事を成し遂げていく様子を、多くのお客さまや関係者のみなさまにお見せしたいと思います。並んだ「記事タイトル」だけでも特徴的ですし(笑)、ぜひお読みいただき、その仕事ぶりと重ねあわせて、es-teamの今後にご期待ください。

(吉田)

 

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FAX版 東京都障害者IT地域支援センター通信
FAX版 東京都障害者IT地域支援センター通信
(クリックするとPDFのサンプルが開きます)

 当センターには、現在2つのメールマガジンがあります。
 一つは、『東京itc通信』といい、月1回、センター主催のイベント情報や、障害者のIT支援機器にまつわるホットな話題などを紹介します。
 もう一つは、『ITまなびー東京』。 隔週の金曜日を発行日とし、都内の障害者(高齢者)関連のIT情報(研修・セミナー・講習会・ニュース等)を、ともかく一早くたくさんお届けするサービスです。

 多くの方がネット登録しこれらを読んで下さっているのですが、メールという性質上、残念ながら個人ベースでの利用がほとんどです。そこで、役所や地域の障害者福祉センター等でもっとご利用いただけるよう、この秋から、ダイジェスト版をFAXでお届けするサービスを開始いたしました。今後はWEBに掲載し、個人の皆さまにも読んでいただけるようにいたします。 都内の障害者(高齢者)のIT情報はどうぞお任せを!

(堀込)

●お問い合わせ先
東京都障害者IT地域支援センター
〒162-0052 新宿区戸山3-17-3 (最寄駅:副都心線 西早稲田駅)
電話 03-3208-0471  FAX 03-3208-0472
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 東京コロニーの「IT技術者在宅養成講座」修了生も多く参加するプログラミング学習グループ「智恵の和」で、9月24日に開催された「ETロボコン東京大会」に出場してきました。
 目標としていた「完走」は残念ながら叶いませんでしたが、Javaによる組込みプログラミングに初挑戦でき、とても良い経験になりました。
 智恵の和では、これからも新たな技術テーマに挑戦していきます!

(岩田)

ETロボコン
規定のロボットを使って…

ETロボコン
コース上をどれだけ速く走れるかを競います

ETロボコン

●智恵の和サイト

●ETロボコン2011

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◆株式会社TBSテレビにて在宅勤務決定
 T.K さん てんかん 2級
 (職業紹介事業2011年登録)

   
◆株式会社 東京商工リサーチにて在宅勤務決定
 I.N さん 精神疾患 2級
 (職業紹介事業2008年登録)
 (2008年度 短期IT講座「Web基礎編」修了)
   

◆基本情報技術者試験合格
 H.H さん 筋ジストロフィー 1種1級
 (IT技術者在宅養成講座 2011年修了)



編 集 後 記

 ついこの間まで暑かったのに、なんと「酉の市」のポスターを見かけるようになりました。
 東京に出てきたばかりの頃、新宿花園神社の酉の市で小さな熊手を買いました。その時、神社中の皆さんが「東京生活頑張れ〜」と三サン七拍子をやってくれて。以来わたしにとっての酉の市は「共助」の神様になりました。バリバリ商売の神様なのにね・・・。

(堀込)

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