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■重度身体障害者の在宅就労を考える
トライアングル
機関紙『トライアングル』は三菱商事株式会社様のご協力により発行しております。

Vol.56 
CONTENTS 2012.7(平成24年)

■障害者総合支援法成立にあたって

■障害をもつ方の在宅雇用事例

■es-teamミーティング2012開催

■シリーズ第18回 東京都障害者IT地域支援センター便り
 オフィスマラソン再開!

■1年生初めてのスクーリング

■おめでとう

 2010年3月、この機関紙Vol.49上に、『今動き始めた! 障がい者制度改革』と題し、“千載一遇のチャンスが訪れるのでは?”とワクワクしながら推進会議の原稿を書いたのがつい先日のように思い出されます。 この改革の一連の流れの中で、さる6月20日、国会は障害者総合支援法を成立させました。ご存じのとおり、障害者自立支援法に代わる法律として、皆が地域社会で共生できるよう社会的障壁の除去を目的としたものです。

 しかし残念なことに、新しく盛り込んだ内容(障害者の範囲に難病患者を加えたこと、重度訪問介護の対象者を拡大したこと等)も多少はあるものの、総体的には、求められていた大きな枠組の変更はなく、ほぼ現行法を踏襲していると言ってもよいものでした。

 福祉サービス支給決定における本人の意向尊重や、障害者支援の制度設計に対する国の責務のあり方などは明確にされず、また、サービス利用料原則1割負担(応益負担)の廃止を与党が約束したにもかかわらず、自己負担も残りました。3年間の見直し法と言われても、就労支援の現場にいるものにとっては納得しづらいものであり、力の抜ける感じは否めません。

 とはいえ、ここ数か月の間に、障害者の法定雇用率のアップや、精神障害者の雇用義務化など、長年動かなかった指標が少しずつ変化しているのも事実であり、「遅々として進んでいる」という言い方もできるのかもしれません。何と言っても、障害当事者が約半数を占めた画期的な会議(障がい者制度改革推進会議)が2010年から積み上げた骨格提言は、ぶれない私たちの灯りです。それを携えながら、それぞれの実践者が、それぞれの持ち場で、3年後の本丸がどこにあるのかを見極めていかなければならないのでしょう。

 「多様な生き方」の根源には「多様な働き方」があるはずです。職能開発室が長年追いかけてきた「多様な働き方」の実現を目指す時、我々の本丸は、障害者が働くための新たな法律の創設にあるのでは、と思っています。決して雇用促進法の一部改正などではなく

(堀込)

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長谷川晴基さん
長谷川晴基 さん

長谷川晴基さん (30代)
(筋ジストロフィー1種1級)
(IT技術者在宅養成講座 アプリケーションコース 2011年修了)

株式会社TBSテレビ 番組考査部


仕事開始時期
2011年
労働形態
契約社員
就業時間
10:00〜17:00
仕事内容
番組モニターマネジメント
出  社
不定期
就労場所
自宅(入所施設)

 今回は、就職してちょうど1年、テレビ番組つくりの後方支援に奮闘なさっている株式会社TBSテレビの長谷川晴基さんにご登場願います。
  実はこのお仕事は、1997年に、長谷川さんの大先輩(在宅パソコン講習1992年修了)の吉川誠一さんがTBS様に入社された折に立ち上げられ開始された業務とのこと(※1)。14年めにして、吉川さんから長谷川さんにバトンタッチされた大切な役割とうかがいました。

(※1)高齢・障害者雇用支援機構 吉川誠一さんの掲載された在宅雇用事例の記事(PDF)

Q:TBS様での入社面接からちょうど1年、まずは現在のお仕事を教えてください。

 はい、去年の7月からTBSテレビの番組考査部という部署に所属しまして、主に障がいがある方、またはその支援をされている方を対象とした番組のモニター制度の仕事全般を任されております。

 このモニターは、前述のような方の視点からTBSの番組に対する率直な意見をおうかがいするもので、「障がい」などの視点はもちろんですが、それだけにこだわらず日常の気づきや感想を色々頂戴しております。

Q:モニターさんの作業は想像がつきますが、マネージメントとはどんな仕事でしょう。しくみも含めて教えてください。

 まず、モニター制度に登録されている方からメールで番組についてのモニター文を受け取り、文章を整えたり、実際にその番組を私が視聴して、書かれている内容が正しいかなどの確認をします。問題が無ければそれを1週間・1か月単位でまとめて局に送り、局はそれを月単位で1冊の冊子にして、番組制作者や上層部に配布します。局の担当者とは、適切な言葉が使われているかどうかとか、配布する報告書の構成をどうするかといったことなどを常にやり取りしていますね。

 その他に、このモニター制度専用のサイトをわたしが作り運営しています。これは主にモニターさんに対する情報提供が目的です。

Q:興味深いお仕事ですね。在宅勤務のために事前に準備したことや大変だったことはありますか?。

 実は、私は入所施設で生活をしながら社員として働いております。そういう人は極めて少ないんじゃないですかね。受け入れ側の施設の体制と、雇う側の企業の配慮がないと到底無理だったと思います。

Q:なるほど。具体的にはどんなことでしょう。

 会社には、まず施設の生活時間を理解してもらいました。例えば入浴は日中にありますし、施設特有の行事などもあります。幸いにもTBSはフレックスタイムを在宅勤務では導入しており、1日7時間の就業時間の中でうまく切り分けて働くことができています。また施設側も、とにかく仕事を第一にということで、入浴時間を変更したり、行事を欠席してもよいと、こちらも柔軟に対応してもらっています。情報の保護についても、郵便物を開ける際は中身を取り出さない事や、職員が部屋に入るときはPCをスクリーンセーパーにするなど様々な工夫をしています。

Q:施設の生活と一般就労の両立をうまくなさっているのですねえ。長谷川さんにとって、そこまでしての在宅勤務の意味はどんなことでしょう。

 やはり、今まで道を閉ざされていた人たちが、「がんばれば働くことができる」という希望をもてることだと思いますね。わたしの「筋ジス」という病気は筋肉が衰えていく病気で、体力や筋力はほとんどありませんので、通勤電車に乗って会社の往復などとてもできません。もし通うとなれば、まさに通勤が仕事となり(笑)、仕事の他には疲労で何も出来なくなる。「生きる」ということを考えた時に、例え通勤して何とか仕事は出来たとしても、あとは何も出来ない、これでは何のための人生かとなってしまうでしょう。そうした基本的な問題をクリアできるのが、重度の障がい者にとっての在宅就労なんですよね。

Q:なるほど、一般の方にもとても説得力があります! 仕事の詳細をもっとうかがいたいのですが、紙面の都合上、心がけで一番のポイントと、あとへ続く皆さんへメッセージを!

 まだ大したことは言えないのですが、日々心がけていることは、とにかく業務を滞りなく行うこと。重度の障がいがあって在宅就労なのですから、何かあった時に自分で処理ができない可能性は大いにあります。まずはトラブルに自分で対応できるよう、あらかじめ事態を想定しておきたい。例えば、パソコンは1台壊れてもすぐにもう1台で対応できること、インターネット回線も予備の無線を持っておくとか。その他、当然ですが体調管理もしっかりと。「長く続けられるように」というのが究極のテーマで、常に意識して心がけることが大事だと思っています。 あと、皆さんへのメッセージとしては、とにかく諦めないで欲しい。どんな障がいがあったとしても「働きたい!」という強い気持ちと、常にアンテナを張り巡らして、パソコンのスキルを磨いていけば願いは叶います。がんばってください!!

インタビューを終えて:

 いつも礼儀正しく爽やかな長谷川さん。先日、あるセミナーでご登壇いただいたところ、その後「長谷川さんにお話しに来ていただけないか」と多くのオファーをいただきました(別にわたくしがマネージャーではないのですが!)。長谷川さんは、あとに続く人達のために、ご自身の経験から「専門的な職業訓練の場を増やすこと」の重要性を色々な場面でおっしゃっています。
 就労到達はラッキーなことでなく、誰しも当たり前の職リハによって、当たり前に達成できる。そうした時代にそろそろしなくてはいけないですよね。

(堀込)

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es-teamミーティング
es-teamミーティングのようす

 

 在宅就労グループ「es-team(エス・チーム)」を構成するメンバーは現在15名。これまでの中で最も多い登録者数で今年度を迎えました。企業に就職する、あるいは福祉施設で働くといった就労形態とは異なる、いわゆる「フリーランス(自営)型」として、チームワークで多くの仕事を遂げてきましたが、私たちを取り巻く環境もここ数年で変化の兆しを見せています。昨年度末の行政通知により、障害者自立支援法で定める就労継続支援施設利用における在宅就労が、条件付きながらようやく可能になったこともそのひとつであり、いままで公的な支援のない中、独立採算で運営をしてきたes-teamにとっても転機であると考えます。

 こうした中、今年度で8回目を数える「es-teamミーティング2012」を開催しました。登録メンバーが一同に会し、新メンバーの紹介、事業報告や今後の方針の話し合い、そして親交を深め合うための大事な一日です。今回は、前述の支援施設の在宅利用に関する動向とコロニーの方針説明に加え、ゲストスピーカーとして、金政玉(きむ・じょんおく)さん(内閣府障がい者制度改革推進会議 政策企画調査官)をお招きし、「制度改革推進会議で見えてきたもの」と題した講義を行いました。

 金さんといえば、当事者の立場からこの制度改革に参画し、政府とのパイプ役も担う象徴的な存在。コロニーに在籍されていたこともあり、親しみを感じながら話に聞き入りました。講義は約1時間と限られた中でしたが、労働、教育、所得保障などの様々な個別分野の整理と課題、今後の進め方など、行政の立場、当事者の立場から多角的に捉えて語りかけてくださったことが印象的で、密度の濃い内容となりました。

 ちょうどこの日、政府・参議院本会議において「障害者総合支援法案」が可決・成立されたこともあり、いわゆる「基本合意」とかけ離れた内容に再考を求める動きもいっそう強まりそうな状況ですが、私たちメンバーや職員も自らのこととしてこの動きを見ながら、視野を広げつつ、在宅就労という私たちの日々の持ち場で成果を積んでいくという思いを新たにした次第です。

(吉田)

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移転後の新しいIT地域支援センター
移転後の新しいIT地域支援センター

 早稲田から茗荷谷に移転後、しばらくお休みしておりました「オフィスマラソン」を7月2日より再開いたします。ご利用の皆様、お待たせいたしました!昨年度までは土曜日開催でしたが、引っ越し先のビルの開館都合上、今期からは毎週月曜日の14時〜16時の実施となります(申し訳ございません)。

 オフィスマラソンは、WordやExcelを自分のペースで学びたい方のためのもので、全く初心者のレベルからMOS試験受験までの範囲を、指定されたテキストに沿って自習形式で習得していくものです。疑問点はITサポーターが熱血サポート。どのコースから始めてどのコースで終わるかはあなたの自由です。ご自分のスキルに応じて選んでみてください。

(堀込)

●申し込み、お問い合わせは、事務局まで
東京都障害者IT地域支援センター
〒112-0006 文京区小日向4-1-6
東京都社会福祉保健医療研修センター1階 (最寄駅:丸ノ内線「茗荷谷」駅)
電話 03-6682-6308  FAX 03-6686-1277

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スクーリングのようす
スクーリングのようす

 5月30日に「IT技術者在宅養成講座」の1年生が東京都障害者IT地域支援センターの講習室で初めてのスクーリングを行いました。昼食や休憩時間、授業後のIT地域支援センターの見学時等は、普段顔を合わせない同期生と他愛のない雑談で盛り上がっていました。

 スクーリングでは、IT技術者の象徴ともいえるプログラミングの初歩に触れ、初めてのチャレンジに頭を抱えながらも、真剣なまなざしで取り組んでいました。その後の在宅学習でも、思うように動かずに悪戦苦闘しながらも、理解が進むにつれてプログラミングの楽しさも感じてもらえるようになりました。

(山崎)

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◆株式会社TBSテレビにて在宅勤務決定
 M.G さん 両上下肢、体幹機能障害 1種1級
 (職業紹介事業 2008年登録)

MGさん
   
◆株式会社沖ワークウェルにて在宅勤務決定
 S.T さん 脳性麻痺 1種1級
 (職業紹介2011年登録)
STさん
   

◆基本情報技術者試験 合格
 K.H さん 疾患 1種2級
 (IT技術者在宅養成講座 受講中)

KHさん
   
◆ITパスポート試験 合格
 S.T さん 脳梗塞 1種2級
 (IT技術者在宅養成講座 受講中)
STさん
   
◆マイクロソフトオフィススペシャリストExcel 合格
 Y.C さん 進行性筋ジストロフィー 1種1級
 (IT技術者在宅養成講座 受講中)
YCさん
   
◆マイクロソフトオフィススペシャリストWord 合格
 K.K さん 脊髄損傷 1種1級
 (IT技術者在宅養成講座 2012年修了)
KKさん
   
 S.T さん 脳梗塞 1種2級
 (IT技術者在宅養成講座 受講中)
STさん


編 集 後 記

 5月16日に参議院会館で行われた「障害者自立支援法訴訟の基本合意の完全実現を目指す会」による「国は基本合意・骨格提言を無視するな!全国一斉集会」の東京集会にスタッフとして参加させて頂きました。当日の参加者は600人を超え、弁護団長を始め、有識者や元原告の方々の熱い弁に大きな拍手が湧きあがるなど、自立支援法を取り巻く様々な問題や関心の高さに心を打たれました。法律の改正と運用には大きな障壁があるものとは思いますが、その間にも苦しまれる方々への配慮を第一に、誠実なる施策施行に繋がるよう願っております。

(山崎)

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