■障害のある人の在宅就労を考える
トライアングル

機関紙『トライアングル』は三菱商事株式会社様のご協力により発行しております。

Vol.68 
CONTENTS 2018.07(平成30年)

「国の「障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会」で在宅就労が論点に」

 現在開催中の厚生労働省の「今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会」(職業安定局)第10回では、在宅就業支援制度が論点の一つとしてとりあげられています(図1)。
今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会
図1.「今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会」(厚労省職業安定局)第10回の資料より

 障害のある人のパソコンを使った在宅就労が生まれて30年、単体のテーマとしての研究会や調査はこれまでもありましたが、「雇用促進」のテーマの中で、従来からのメジャーな課題とともに、「在宅」が検討されることは初めてではないでしょうか。また、雇用以外の「在宅就業支援制度」に焦点があたるのも、この制度ができて初のことのように思います。

 「雇用されない形で働く人」を中軸に、教育、仕事発注、相談等の支援機能を提供するこの「在宅就業支援制度」は2006年にできたもので10年以上が経過するのですが、実はここまで一度の見直しもなく、支援団体の数も増えていません。 理由のひとつとしては、就労支援施設に対する訓練等給付のような経営的な後押しのしくみが無い、ということが挙げられます。「在宅就業支援制度」は福祉的な法内事業ではありませんが、仕事の受発注やそれにまつわる事務、また多くの相談メールや電話の回答には相応の時間がかかることは自明です。この制度を誠実に実施してきた全国の団体は、実態の正当な評価やそれに対する合理的な支え方の検討を10数年期待してきたのではないでしょうか。

 前述の研究会では、安易に在宅就労の方向に誘導することの是非や、協働者間の連帯感の大切さ、また、離れているからこその移動支援の充実も俎上にあがっていました。これらの視点は、草の根で支援してきた団体も長きに渡って指摘していたこと。 改めて、来た道が間違っていなかったことを感じ、心強く思っています。

(堀込)

障害のある人の在宅就労事例
「技術が社会参加を後押しする力は本当に大きいです!」

斉藤 恵司さん (筋ジストロフィー1種1級)
社会福祉法人東京コロニー 職能開発室
(東京都障害者IT地域支援センター 所属)

就労開始時期 2004年4月 斉藤恵司さん 写真1 テレワークロボットで講演中の斉藤氏
就労形態 在宅勤務
就労時間 月曜日と木曜日 午後勤務
就労内容 メールでの相談対応、メルマガ作成
打ち合わせ 常時、テレワークツールにて
 満を持して、わたくしどもの在宅勤務スタッフの登場です。もともとは電動車椅子で通勤をしておりましたが、体調等の理由により2013年より現在まで新潟県からテレワークをしております。障害当事者団体の事務局を古くから努めるなど経験豊富。わたくしどもの精神的支柱のスタッフです。
Q. 自己紹介からお願いいたします。

 長野県生まれ。高校卒業後、長野市にある富士通に入社し、主にコンピューターのハード試験やテストプログラム開発などを行いました。20才頃に筋ジストロフィーと診断され、その後車椅子利用となります。25才頃、富士通を退職し上京、社会福祉の専門学校卒後、社会福祉法人に入職し、システム管理などを経て、2004年に「東京都障害者IT地域支援センター」の前身の立上げに従事し、今に至ります。

Q. 今の働き方への経緯と業務内容を教えて下さい。

 2013年に脳出血で倒れ、その後、療養で新潟に移ることに。当初は戸惑いましたが、もともとセンターに通勤していた時も在宅勤務の日を設けていましたので、同じように作業ができる確信はありましたし、実際仕事への復帰もスムーズでした。

IT地域支援センターの様子
Q. 在宅勤務のしくみがあるといざという時に心強いということですね。さて、お仕事内容やコミュニケーション方法はどんなものでしょうか。

 メルマガの情報収集と作成、外部メールの問い合わせ対応など広報的な業務を主に担当しています。
センターに来場してのご相談は都民の方に限らせていただいておるのですが、メールでの相談は全国の方に対応しているため、結果としては遠隔地にいながら色々な地域の方と交流しておりますね。

Q. 聞くところによると、コミュニケーションツールは遠隔ロボットとか!。

 ええ、ご見学の方にはウケますね(笑)(写真1参照)。2015年、芝浦工業大学の研究に参加することで、遠隔操作ロボット「ダブル」の活用が始まりました。
ダブルは、写真1のように車と軸のついた本体とiPadと充電台で構成されています。遠隔からの操作で自由自在に動き回って現場の様子を観察し、その場にいる人と会話を楽しめるしくみです(正式名称:Double Robotics、無線LANの環境が必要)。 遠隔からの操作はパソコンの他に、iPhone、iPadでも可能です。

Q. このツールの導入による仕事の効果はどんなものでしょうか。

 会話はiPadでするので、そこはスカイプなどと変わりませんが、必要に応じて背の高さを120~150センチまでの間で調整したり、首も左右に振れる。そして何と言ってもタイヤがついてて、遠隔操作で自由自在に動き回れるところが、これまでの支援機器と違います。職場の様子がリアルに見えると同時に、会話や会議が自分で移動しながらできる。あたかも、東京の職場にいた頃のようで、一体感が有ります。

Q. ユニークな道具の利用者のお立ち場から、最後に一言、お感じのことを皆様にいただけますか。

 在宅勤務者が、職場の人と動きを伴う会話や会議 が出来ることの他にも、通学できない生徒さんが、教室でみんなと同じ授業が受けられたり、病院のベットの患者さんが、他の部屋の患者さんと会話できるなど、アイデア次第で便利に使えます。


 こうした支援機器の普及を図るには、支援学校や就労支援の場などに、積極的に公が機器展示や貸与をすることが望まれると思います。技術が社会参加を後押しする力は本当に大きく、わたしが色々な困難はあれど今のように仕事を継続できるのも、支援機器とともにあるからだと確認しております。これからもセンターをよろしくお願いいたします!(笑)。

IT技術者在宅養成講座コーナー
― 『第9回教育ITソリューションEXPO』に参加して ―

 2018年5月16日より3日間、『第9回教育ITソリューションEXPO』が東京ビックサイトで開催されました。

 ご存知の方も多いかと思いますが、この展覧会は、業務支援システム、ICT機器、デジタル教材、eラーニング、各種学校向けサービスなどが一堂に展示される日本最大の教育分野IT専門展です。第9回となる今期は、700社以上の出展企業からの様々な新製品の展示やデモ・模擬授業に加え、実績ある著名な方々の専門的なセミナーも開催され、大変素晴らしい内容でした。

 私ども職能開発室における教育事業でも、より良い新製品・教育手法を取り入れ、講習生に効果的な学習指導をしていきたいと常々考えておりますので、こうした展示会は非常に有意義な情報収集の場となっております。

 数多くの製品が並ぶ中で、個人的に注目したのが2点ほど。

 1点目は、プログラミング教育に関する展示。2020年より義務教育化されることもあり、子供が夢中になって取り組めるよう学習内容に工夫している様子がうかがえます。学校関係者の方々は新制度導入で大変かと思いますが、今後、IT在宅養成講座にアルゴリズム思考能力の高い講習生が増えてくると思うと楽しみです。

 2点目は動画中継による遠隔講義に関する展示。ICTの発展により動画配信が当たり前の世の中になってきました。新技術や新サービスを流用することで付加価値をつけ、これまで以上に学習効果が見込まれる遠隔講義も次々と生まれてきています。

 やむを得ず通勤通学ができない方たちに大きな可能性を広げてきたこの分野。在宅就労におけるコミュニケーションツールなどとあわせ、これまで以上に発展することを祈っています。

 次回開催は、2019年6月19日より3日間を予定(関西地区は2018年11月7日より3日間)とのことなので、興味を持たれた方は是非ご参加いただければと思います。

(受川)

PCに触れる子供

シリーズ第30回 東京都障害者IT地域支援センターだより
― 平成30年度IT支援者養成研修ご受講者様 募集中 ―

IT地域支援センターだより
コース テーマ 講座概要 主に対象となる障害特性
コース1 コミュニケーションを支える コミュニケーション障害をカバーする会話補助的な支援技術(意思伝達装置を除く) 聴覚障害 発達障害
言語障害 知的障害 等
コース2 意思伝達を支える 意思の表出が困難な方のための意思伝達を中心とした支援技術 ALS、脳血管障害の後遺症など、意思伝達、意思表出が難しい方
コース3 操作困難を支える 情報機器の物理的な操作に困難さをかかえるケースでの支援技術 上肢障害(肢体不自由)
コース4 見えない、見えづらいを支える 視覚的な困難さをかかえるケースでの支援技術 視覚障害(全盲、弱視、視野障害)。または視力はあるが読字困難な方
コース5 理解、認知、記憶を支える 障害や疾病により、理解や認知、記憶等に困難さをかかえるケースの支援技術 発達障害
高次脳機能障害
知的障害、失語症等
 当センターでは、東京都障害者IT支援総合基盤整備事業の一環として、障害者のIT支援関係を担当する区市町村職員・障害者福祉センター・障害者就労支援センター等の地域支援者様向けに「IT支援者養成研修」を実施しております。

7月~9月の上半期は当センターで集合学習をご受講いただきます。当事者の方々の生の声、実機を使っての体験、今話題の視線入力やOTONGLASSなど、試してみたくてもなかなかチャンスがなくてという方、ぜひこの機会に実際に触れてみられては!!お申込みお待ちしております。お早めに!

 詳細はこちらを。
http://www.tokyo-itcenter.com/500jigyo/it-kensyu-2018.html

 当センターに24時間テレビから『アイドラゴン4』が贈呈されることになり、到着を待っております。研修の中で皆様にご紹介できるよう、間に合うと良いのですが!!(下澤)

●お問い合わせ先
東京都障害者IT地域支援センター
〒112-0006 文京区小日向4-1-6-1F
電話 03-6682-6308  FAX 03-6686-1277
Facebookページ
https://www.facebook.com/tokyoitcenter

おめでとう

資格取得おめでとう

基本情報技術者試験 合格

 K.Yさん  障害者手帳1種1級
 (IT技術者在宅養成講座 受講中)
おめでとう

就職おめでとう

IPA 独立行政法人 情報処理推進機構 にて在宅勤務決定

 H.Nさん  障害者手帳1種1級
 (IT技術者在宅養成講座 2007年修了)
おめでとう
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