■障害のある人の在宅就労を考える
トライアングル

機関紙『トライアングル』は三菱商事株式会社様のご協力により発行しております。

Vol.70 
CONTENTS 2019.03(平成31年)

Topic!「障害者雇用促進法」の一部改正案が出ました、何が変わる?

 昨年7月にまとめられた「今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会」報告をもとに、労働政策審議会障害者雇用分科会より、この2月に意見書が提出されました。それに対して厚生労働省よりこのたび「障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律案要綱」が出されたところです。

 大枠としては、国及び多くの地方公共団体において法定雇用率が達成されない状態が長年にわたったという今般の事態において、その再発防止のための規定が加えられています。

 また、民間企業においても、より障害のある人の活躍の場を広げる取組を進めるため、以下のようなものが入りました。

  • 国及び地方公共団体における障害者雇用の責務規定等についての改正。
  • 特定短時間労働者の雇用促進(※週所定労働時間が20時間未満)の雇用の促進及び継続を図るための特例給付金を支給する制度を新設
  • 障害者雇用の有料な取組みをしている中小企業に対して、その認定事業主として認定を行う制度の新設

 特定短時間雇用への給付金によって今以上に雇用のレンジが広がるのはありがたいことで、わたくしどもの教育や在宅就労支援を利用している方々にもすぐに恩恵はありそうです。しかし、「雇用」という枠にどうしても適さない人には、「福祉」や「医療」のサービスを必要なだけ使いつつ「雇用されない」で働く選択肢の保障も一方で大事だと考えます。

 国が作った「在宅就業支援制度」はそうした人達の働く力を大事にする制度でもありますから、一般雇用への転換等だけを重視するのではなく、在宅就業支援団体の責務や専門性を、再検討、再評価することが必要なのではないでしょうか。

 そういう意味では、前述の「障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会」報告および労政審障害者雇用分科会意見書は、少し補足がほしいところです。

(堀込)

•障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律案要綱について
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_03654.html

花のイメージ画像

特集 デジタル活⽤共⽣社会実現会議
ICTアクセシビリティ確保部会

 現在、総務省で開催されている「デジタル活用共生社会実現会議」をご存じでしょうか。

 そのテーマは、ICTを利活用し、多様な価値観やライフスタイルを持ちつつ豊かな人生を享受できる共生社会の実現を目指すもので、そのために、ICTを活用する社会の意識改革・普及啓発策の在り方について検討していくものです。 実は、その会議の下には
<ICT地域コミュニティ創造部会>
<ICTアクセシビリティ確保部会>(以下ICT部会)
の2つがあり、東京コロニーからも、後者に参加をしておるところです。

このICT部会の主な検討事項は、ザックリ言うと
▼障害当事者参加型のICT製品・サービス開発、普及の仕組み等の検討
▼情報アクセシビリティ確保等のための環境整備
 (社会の意識改革、担保する制度のあり方)
などを考えていくもので、会議では毎回様々な分野の現場の方から、ICT活用をめぐる現況や課題、この先の在り方などをうかがっています。

 テーマがあまりにも広く大きいことや、「IoT・AIの活用」といった先端技術の活用も考慮されることから、福祉業界のわたくしどもにはちょっと敷居が高いイメージもありましたが、各分野の方の渾身の活動報告をうかがうと、さすがに障害のある人の情報利活用の今日の課題が集約されてきて、この機会を逃してはならないと回を重ねるごとに確信しておる次第です。

 特に、必要な人に必要な技術が届くためのICT普及の検討は、わたくしどもで運営しておる「東京都障害者IT地域支援センター」の理念でもあり、また、その成果がもたらす、結果としての教育や就労の充実は、法人の積年の課題である、重い障害や疾病のある方の社会参加に必ず繋がるものであります。

 残った期間はわずかですが、関わったものとしての責任を今後も果たしていく所存です。

(堀込)

障がい者のICT利活用イメージ画像

2019年度上半期 障害者委託訓練
― e-ラーニングコース No.e-007 受講生募集 ―

◆障害者委託訓練

 障害者委託訓練とは、(公財)東京しごと財団がハローワークと連携して実施する障害のある方のための多様な職業訓練です。障害のある方が仕事をする上で役立つ知識や技能を身に着けることを目的に、企業、民間教育機関、社会福祉法人、NPO法人等、様々な機関に訓練を委託して実施されています。

 訓練は、求職者向けにいくつかのコースが用意されていますが、この中のe-ラーニングコースでは、都内在住で、訓練施設への通所が困難な障害者等の方を対象(※)に、在宅でインターネットを通じてIT技能の習得を目指しています。

  • (※)e-ラーニングコース訓練対象者
  • ① 身体障害(上肢、下肢(車椅子)、内部障害)の方で身体障害者手帳をお持ちの方・精神障害、発達障害、高次脳機能障害、難病等があり精神障害者福祉手帳、または公的な判定書(意見書、診断書)、難病指定の医療受給者証等をお持ちの方
  • ② 居住地管轄のハローワークに求職登録を行い、訓練受講の推薦を受けた方
  • ③ 職業訓練を通じて就労しようとする意思のある方
  • ④ 障がいの症状が固定もしくは安定しており、訓練受講に支障のない方
  • ⑤ 都内在住で訓練施設までの通所が困難な方
◆「基礎からのレスポンシブWebサイト制作(e-ラーニングコース No.e-007)」

 私ども東京コロニー職能開発室では、来年度上半期における訓練を受託させていただき、4月と7月に開講いたします。

  訓練名は「基礎からのレスポンシブWebサイト制作」。3カ月間にわたりWebサイト制作技術、在宅で働くためのビジネスマナーの習得を目指します。訓練期間中は定期的にスクーリングがありますが、基本的には在宅で週4~5日程度1日5時間の学習となります。受講料は無料。フリーのソフトウェアを利用しての学習となりますが、通信費・教材費は自己負担です。

  募集時期は、4月開講は3月20日まで、7月開講は5月7日から6月下旬まで受付予定です。申込お待ちしております。

(受川)

訓練目標と訓練概要のイメージ画像 具体的な訓練内容のイメージ画像
◆問合せ先/申込み先

 障害者委託訓練に関しては、(公財)東京しごと財団障害者就業支援課 委託訓練推進班までお問い合わせください。
<URL:https://www.shigotozaidan.or.jp/shkn/
<TEL:03-5211-2683  FAX:03-5211-2680>

 なお、訓練の申込みは、居住地管轄のハローワーク「障害者職業相談の窓口」でのお申込みとなります。

 ※この障害者委託訓練は、東京しごと財団が、厚生労働省「障害者の多様なニーズに対応した委託訓練事業」を東京都から委託され実施しています

シリーズ第32回 東京都障害者IT地域支援センターだより
― 東京都ICT支援関係者交流会 ―

 当センターでは、毎年、都内の当事者支援団体様との情報交換を兼ねた交流会を開催しております。

 去る3月13日、今年度は初の試みとして、区市町村の支援者様にも声をお掛けし、広く学んでいただける機会といたしました。年度末の開催ではありましたが、多くの方に来場いただき、有意義な内容となりました。


●テーマ
 「ICT活用で、劇的な情報インフラの向上」

 ICTのもたらす恩恵は、単独の端末利用から、社会全体での利活用に幅を広げてきています。自分以外の人に働きかけるハードルは急激に下がってきました。

 第一部では、障害のある人のICT活用の今後の枠組みが今まさに議論されている、総務省のデジタル活用共生社会実現会議の経過報告をしていただきました。
(当誌面2ページ参照)

 第二部では、これからの新しいインフラについて、次の4つの技術をご紹介しました。

(1)UDトーク (株式会社プラスヴォイス様)
 音声文字化の代表といえるこのアプリの、活用状況や最新の機能についてお話をうかがいました。

UDトークのアイコン

(2)遠隔手話通訳(株式会社プラスヴォイス様)
 聴者とろう者のICTを利用した遠隔のコミュニケーションについて、WEBサイトでできる実例を見せていただきました。

遠隔手話通訳のアイコン

(3)遠隔援護サービス(日本視覚障害者遠隔援護協会様)
 カメラに映ったものを、ネットでつながった遠方のサポーターに確認してもらう遠隔援護のサービスについて、実例で学びました。

遠隔援護サービスのアイコン

(4) 視覚支援デバイス オーカムマイアイ(ケージーエス株式会社 様)
 イスラエルで生まれた「指さすだけで文字も人の顔もわかる小型カメラ」の実演がありました。日常生活用具への広がりについても、提供事業様より、新しい提言がありました。

オーカムマイアイのアイコン

 話題の技術を実演で見ることができたのが何よりの収穫でしたが、加えて、ゲストでご参加下さった総務省様や、都内の自治体様、視聴覚支援団体様等との情報交換や共有が、今後の縦横のつながりを期待させました。

(下澤)

おめでとう

資格取得おめでとう

ITパスポート試験 合格
K.Kさん  障害者手帳1種2級
(IT技術者在宅養成講座 受講中)
おめでとう
ITパスポート試験 合格
T.Kさん  障害者手帳1種1級
(IT技術者在宅養成講座 受講中)
おめでとう
ITパスポート試験 合格
A.Mさん  障害者手帳1種1級
(IT技術者在宅養成講座 受講中)
おめでとう
ITパスポート試験 合格
Y.Sさん  障害者手帳1種1級
(IT技術者在宅養成講座 受講中)
おめでとう
ITパスポート試験 合格
Y.Aさん  障害者手帳1種1級
(IT技術者在宅養成講座 受講中)
おめでとう

編 集 後 記

 新元号まであと僅か。ふと思い出したのは高校時代の「つくば科学万博」。16年後の自分宛に届く「ポストカプセル2001」という特別なポストに皆で投函、キラキラした未来へ抱いた感覚が懐かしい記憶です。

 新元号の節目、新しい時代も明るく希望ある未来をと願います。技術革新も目覚ましく、IT地域支援センターにいると、進化するテクノロジーでほぼ実現できないことはないかのように感じます。その一方で、道具である技術に気持ちを吹き込むのは人ありきであることにいつも気付かされ、心に留めおく日々です。(加来)