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小規模通所授産施設創設とSELPの現状と将来

『ゼンコロ124号』2000年09月

<小規模通所授産の制度化について>

 社会福祉基礎構造改革の中でうち出された社会福祉法人認可基準の緩和方策にそって、このほど「小規模通所授産施設」という名称の新しい施設制度が設けられました。つまり、障害者通所授産施設の定員を現行の20名から10名に引下げ、施設は賃貸借でもよいとする項目の具体化であります。これによって、5,200カ所を数え、75,000人もの重度障害者が利用している小規模作業所の制度的認知を図ったものです。制度の内容は、すでにご承知の方も多いと思いますが、それを承知のうえで紹介することにします。

「小規模通所授産施設」の新設についての方針
1 運営費 年1,100万円
(国1/2、市町村1/4、自己1/4)
10〜19人一律
2 施設整備費 改造、新築 上限 2,400万円
(国1/2、県1/4、自己1/4)
3 設備費 上限 800万円
(同上)
4 施設の賃貸 1,000万円以上の資産を有する場合は施設は民間からの賃借でよい。
5 対象作業所 原則5年の実績をもつ作業所
6 公的資金貸付 社会福祉・医療事業団貸付対象
7 退職共済 民間福祉職員退職共済対象
8 実施年月 平成13年7月
9 その他 (1) 原則5年の実績については弾力適応を検討する。
(2) 運営費補助額が地方自治体の支援によって国庫補助額を超えている都道府県は、現行を下回らないよう、厚生省が要請する。
(3) 既社会福祉法人が小規模を新設する場合は5年の実績は必要としない。
(4) 障害種別共通の制度となる。

 就労関係者は、あくまでも授産施設の小規模化であるから、運営費、施設整備費等も、現行の通所授産の水準を維持すべきと主張しましたが、これを“小規模”という別制度を創設することで、かたちのうえで不整合を起こさない策を講じたということになりました。
 しかし、現行の障害者通所授産施設の措置基準(身体障害、知的障害)および運営費補助額(精神障害)は表1のとおりであり、その格差はきわめて大きい。

表1 通所授産施設(定員20名)措置および補助金
身体障害者通所授産施設 給食あり …委託事務費月単価 133,600円
       …一般生活費月単価 19,080円
給食なし …委託事務費月単価 126,900円
       …一般生活費月単価 10,300円
知的障害者通所授産施設 委託事務費月単価 164,610円
一般生活費月単価 17,290円
精神障害者通所授産施設補助金月額 2,116,700円

(いずれも東京都特別区)

 定員20名の通所授産施設の委託事務費および運営費を年額でみると、(一般生活費を除く)身体障害32,064千円、知的障害39,504千円、精神障害25,400千円となり、これを10〜19人の運営費年額一律1,100万円、それに給食サービスもないことを比較すると、その格差の大きさは歴然としています。現行の措置費等は職員配置基準を中心に、若干の施設管理費を加えて算出されていますが、小規模の場合はその基準が不明確であります。従来の年額110万円が10倍になったと評価する向きもありますが、団体助成と社会福祉施設の運営補助との性格の違いを正しく理解して、これに甘んじないことが大切です。小規模を、授産施設全体のレベルダウンの牽引車にしないよう、関係者は意を注がなければなりません。

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<社会就労センターの現状と将来>

 一昨年(1998年4月)、国の「高齢者・障害者の就労環境と就労支援システムの研究」委託事業の中で、社会就労センター(授産施設)と小規模作業所の実態調査を行いました(1998年4月)。社会就労センターは、1,232カ所(回答率76%)から、小規模作業所は2,468カ所(回答率59.7%)から回答が寄せられました。この調査結果は本年9月に冊子にまとめて発表し、調査に協力していただいたところと、関係者には配布したところです。この調査に基づく就労者の工賃水準は表2のとおりでした。

表2 月額工賃(賃金)の推移
施設種別 1998年度 1999年度 2000年度
生活保護 50,87262,32849,451
社会事業 43,29130,19136,028
身障授産 28,10724,84729,538
身障(通所) 23,41718,18825,843
重度身障 18,48916,77324,682
身障福工 145,182144,662145,363
知的(入所) 9,73812,81512,975
知的(通所) 9,80810,75811,990
知的福工  75,56289,604
精神(通所) 4,3657,89615,538
精神(入所)   16,247
精神福工   109,308
平均値 23,31421,86422,703

(円)

 1988年からの推移をみると、全体として若干の改善はみられるものの、その額は微々たるものであります。厚生省の「授産施設制度のあり方に関する提言」によって、社会就労センターは、訓練機能を併せ持つ継続的就労施設と定義が改められたが、こんな低工賃が続いていたのでは、この施設の存在意味そのものが問い直されるのは時間の問題と言えるでしょう。
 利用者1人あたり月額、身体障害者約153千円(給食費を含む)、知的障害者約182千円(給食費を含む)、精神障害者約106千円(割り返し。給食費なし)の運営費補助が支払われているのであります。
 大手の運送会社の元オーナーで、現在、障害者福祉を支援する財団の理事長職にあるO氏は、「この工賃額は犯罪的である」と断言されたと聞いたが、人を働かせているということはどういうことか、もう一度考え直す必要があります。
 経済界出身の福祉関係補助団体の常勤役職員の中からは、きびしい社会福祉法人批判を聞くことがありますが、よく中身を聞いてみると、それは利用者のためにしっかりした役割を果たしていないのに、特権的に公費が支払われていることへの批判なのであります。授産の実態が広く知られ始めていることを、私たちは認識しなければなりません。
 小規模作業所の月額工賃も全体平均で4,742円と低額ですが、ばらつきが大きく、時間給200円以下が83.3%、100円以下が53.8%もいるという状況です。
 最近では、小規模作業所に対する地方自治体の支援も手厚くなっており、体質的には社会就労センターと似てきています。やや障害が重いことや、障害種別混合型が比較のうえで多いという程度の違いです。小規模作業所を、小規模通所授産に引き上げることにしたとはいえ、現行の地方自治体による補助金額を含めると、年額1,100万円という額は2〜300万円の改善にすぎず、12〜13人以上は逆に減額になるところもあって、運営費の面からは言われるほどの改善とはなっていませんが、とにかく制度化されるのです。
 利用する人々の処遇がどの程度改善されるのか。せいぜい現行の社会就労センターの水準ということであれば、同じ批判にさらされることになるでしょう。 かつてある身体障害者が、次のように私に言ったことがあります。“授産施設は稼ぎの少ない仕事を1日中やらせて、わずかな小遣い銭を渡すだけ。障害者を食いものにしている、とまでは言わないが、似たような仕組みになっていると思っている”と。当時、私は反論しましたが、現実にはそういう側面のあることを内心では否定しきれませんでした。
 昭和45年に全国授産施設協議会(現全国社会就労センター協議会)の役員に就任してから、私の思いはただひとつ、授産就労者の工賃の引上げ、処遇の改善でありました。
 振興センターの立ち上げや、授産制度改革提言への取組み、CI事業の実施、SELPセンターの法人化などは、その代表的な事業でした。また、営業開拓職員の配置もその効果を主張して実現したものです。
 しかし、問題を私自身の意識に還元して言えば、私の30年近い役員活動の結果はなんであったのか。何も変わらなかったという空しさであります。

 中央セルプセンターが、とにかくNPO法人として認可申請し、社団法人をめざした目的にそって動き出しました。
 ようやく、という思いはあるものの、これで事業振興へ向けて一歩踏み出したことになり、関係者に敬意を表し、前進を期待したいと思います。
 しかし、社会就労センターの問題は、制度そのものを根本から検討しなおさなければ、到底時代にふさわしい事業体とはならないと、私は思います。
 障害者施設制度・体系全体を見直す視点からの検討が求められているのです。これまでの歴史から判断して、よほどの方策を打ち出さない限り、現状を引きずっていくでしょう。そして、社会就労センターは、障害者からも、国民からも見放されて消滅する運命をたどることになるでしょう。
 以上述べたことは9つの社会就労センターを現に経営している自らへの警鐘であります。

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