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最近の動きの中から

『ゼンコロ115号』1997年05月

「予算の抑制は例外なし」のこと

 来年度の国の予算見通しで、社会保障関係の自然増8千億円となるが、政府は、これを3千億円以下に抑制する方針と決めました。自然増8千億円の内訳は、年金関係1千5百億円、医療費5千5百億円は、福祉関係1千億円と発表されています。医療費の自然増が最も大きいが、この額は先国会で成立した医療関係法改正にともなう国民の負担増は折り込み済みと言われています。
 そうすると、差し引き5千億円の実質的な削減を実行しなければならないことになり、機械的に計算すると、福祉関係は1千億円の自然増に対して375億円に抑えなければならないということになります。どこをどうするのでしょうか。
 与党の中で、社会福祉も例外なしと声高に主張する議員がいても、かつて福祉議員といわれていた人々が、意見を言える雰囲気ではないといわれています。昨年の彩福祉グループをめぐる厚生省幹部の不祥事に対する国民の批判が、福祉事業への逆風としても作用しているのです。
 しかし、そうした明らかに特異な事例を一般化し、虚構を作りだして、立ち遅れている社会福祉全体の問題を、公共事業や行政経費その他と同列に扱い、例外なしと切り捨てるような政治は、正常なのだろうかと、改めて考えてしまいます。国の財政が危機的状況にあることは、私たちもよくわかっているつもりですが、その原因、そして対策を考える場合、底辺に生きる人々への配慮が基本になければ、それは血の通った政治とは言えないと思います。
 かねてわが国の社会保障全体の構造は、社会福祉の占める割合が低く、バランスがとれていないとされ、そうした判断もあって、ゴールドプラン、エンゼルプラン、障害者プランなどが策定されたという経緯があったはずであります。その途上で、明らかに批判のある各種の政府関係事業と同列に扱われることは納得しがたいといわざるを得ません。
 社会福祉関係者は、こういう時期にこそ冷静に、かつ理論的に問題点を明らかにしつつ、団結して政府や国会等に働きかけるなどの行動をとることが必要であります。
 最近のマスコミ関係の報道も社会福祉に対して客観性を失っているように思えます。事件を興味本位にとりあげ、施設建築の補助単価が実勢価格の20%も高いなど、丸投げという特異な悪行を材料に、これを一般化し、福祉事業への国民の失望を深めています。大部分が正常であり、むしろ過大な負担を背負っている福祉事業の実態が、国民の目に歪められた形で映される傾向にあります。正しい報道が行われるよう、マスコミに働きかけることが必要です。
 例外なし、一律カットの政策に抵抗するために、自らをかえりみながら、しっかりしたアクションを起こしたいものであります。

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「高齢者・障害者」という表現のこと

 最近、表題のような言葉がよく使われています。曰く、「高齢者・障害者情報通信利用方策」「高齢者・障害者福祉用具研究」「高齢者・障害者用住宅研究」などなど。
 昨年厚生省サイドの「福祉用具の評価に関する研究」の委員会があって、私も出席したところ、その主管が老人保健福祉局であったのに驚いたことがあります。しかも資料の中には障害者のことが殆ど書かれていないのです。本来、障害福祉分野の部局が主管となるべきなのに、です。私の質問にも的確な答は返ってきませんでした。
 情報通信の問題にしても、法律は「身体障害者の利便の増進に資する通信・放送身体障害者利用円滑化事業の推進に関する法律」という大変長い名称の法律が制定されているのですが、施策を進めるときには高齢者を頭にもってきて、前述のような方策となるのであります。
 高齢者と障害者の施策は共通するところはあるものの、基本のところは質的に異なるものであることは、改めて述べることでもありません。高齢者問題の一つの側面は、高齢に伴う障害の問題であります。もう一つの側面は、人生の主な役割を全うした後の終末をどう有意義に生きるか、ということだと私は思います。したがって前者の場合は障害者問題で括ることができるし、重なるのですが、後者の場合は障害者問題とは異質であります。
 寝たきり、感覚機能の低下または喪失、歩行障害など、高齢に伴う障害は、基本を障害者問題としてとらえ、必要な施策を深めていくことでなければならないと思います。
 高齢者問題を頭にもってきて、障害者問題はそのついで、場合によっては欠落さえするというのでは本末転倒というべきです。情報保障というか、情報通信の問題にしても、それは心身の障害に着目して対策は進められるものです。とくにコミュニケーション障害の大きい聴力や視力障害者に対するサービスが柱になることは常識です。補装具や福祉用具等も障害に着目して開発され発展してきたものであり、これからもそこは変わりようがありません。
 にもかかわらず、なぜ、高齢者・障害者対策となるのでしょうか。とくに行政機関がこうしたあいまいで不正確な表現を使用する場合が多いのですが、その理由は予算を確保する方便といわれています。高齢者にはすべての国民が平等になっていきます。いわば多数者の問題です。これに対して障害者は少数者の問題というわけです。政府や国会も障害者対策より、高齢者対策を前面に出したほうが、国民の支持を得やすいという意識が働くのは当然でしょう。心ではなく算術の世界に変わるのです。
 私は障害者問題は少数者の問題ではないと思っていますが、実は少数者のことに意を注ぐことこそが民主主義政治の基本といわれているのです。いまは亡き灘尾弘吉先生が、福祉分野でも高く評価されたのは、先生が少数者のことにいつも目を向けた政治家であったからであります。
 少子・高齢化社会は社会全体の問題であり、高齢者問題はその中の一つの分野の問題であります。障害者問題と高齢者問題は重なる部分はあっても、異なる分野の問題であり、それぞれの分野を深めることによってこそ、両分野が充実発展するのであります。
 予算を獲得しやすいというだけで、こうしたあいまいで不正確な表現を使用することはやめてほしいと思います。

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障害者プラン推進議員連盟発会のこと

 先に開かれた日本障害者協議会の協議員総会の席上、この会の顧問でもある八代英太衆議院議員があいさつの中で、国会に表題の議員連盟を超党派で結成したいと述べられたが、会は6月下旬に発会しました。
 会長は山下徳夫衆議院議員(元厚生大臣)、事務局長は八代英太議員で、後記のような役員構成となっています。連盟構成員は衆議院議員128名、参議院議員35名の163名で、その内訳は自民108名、新進19名、民主14名、共産9名、社民6名、太陽2名、さきがけ1名、新社会党1名、無所属2名です。
 現状も今後も状況は大変険しいと認識しなければなりませんから、障害者プランを超党派で推進する目的で設立されたこの議員連盟の発会は、大変心強く、かつ喜ばしいことと思います。障害者プランの見直しを含む、総合的な障害者施策を推進する拠り所として、関係団体はこの会と緊密な接触を保ちつつ、積極的に行動していくことが必要であります。

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