重度身体障害者の在宅勤務を考える――

トライアングル Vol.13 1998.2(平成10年)

トーコロワ―キングネット紹介『仕事分配の事例紹介』
障害のある方の在宅勤務実施企業 インタビュー4
第2回Javaセミナー 〜Javaとオブジェクト指向技術〜
在宅勤務障害者 雇用管理マニュアル
ONE・STEP企画のコーナー
平成10年度 東京都重度身障者在宅パソコン講習生決定!
平成9年度秋期システム・アドミニストレーター初級合格

トーコロワーキングネット紹介
ホームページ編集『仕事分配の事例紹介』

 トーコロワーキングネットの1つの機能として「障害のあるコンピュータ技術者への在宅就労の機会を提供する」があります (トーコロワーキングネットについては、トライアングルVOL.11で紹介)。

 本事業は昨年の6月から試行的に始めていますが、これまでデータエントリやホームページの編集の仕事を主としてきました。 今回は、日本障害者リハビリテーション協会様の仕事であります「ホームページ(以下HP)の編集」をご紹介致します。

◆内容:全国の自治体の障害者福祉計画書をはじめとした福祉情報をHPへ載せるためのHTML化作業

◆メンバー:在宅のワーカー3名

◆体制:トーコロの在宅コーディネーターが窓口となり、3名のワーカーへ仕事の依頼・成果物の品質チェックを行う(下の仕事の流れ図を参照)

◆進め方:初回のみ打合せ(トーコロまたはワーカーの自宅にて)を行ない、仕事の内容や進め方・スケジュールについて一通り説明し、その後はすべてメール・FAX・TELでやりとりをする

◆特長:原稿はすでにあるため、それをできる限り忠実に表現するようにHTML化しなければならないこと、視覚障害のある人への配慮をする(テキストリーダーなど読み上げソフトを使っても伝わる)こと

◆Point:限られた期間の中でできる限り後戻り作業をせず効率的に行うこと、ばらつきのない一定水準の品質を保証する。 このために、HP編集に高度な技術を持つM氏に先行して作業を行ってもらい、サンプルファイルとする・またM氏には他の2名の技術アドバイザーをお願いした。 さらに、できるだけ早い段階でHTML化するための標準化資料を作成した


仕事の流れ図

 今回の作業は、1原稿を一人の人が担当したため、チーム間のやりとりも少なく在宅作業に適した内容でした。 この他にも、ソフト開発・DTPの編集・翻訳の仕事など裁量性の高いものは、在宅の作業に適していると思います。

 今後とも在宅で可能と思われる仕事がございましたら、お声を掛けて頂けますようお願いいたします。

(小川)


障害のある方の在宅勤務実施企業
インタビュー4

 今回は、金融ビッグバンの要となることが予想される優良企業、シティバンクさんを訪問し、在宅勤務をなさっている並木秀之様(44才)にお話をうかがいました。

並木さんは生まれながらに脊髄裂という世界でも非常に患者数の少ない難病をお持ちですが、それによって引き起こされる、癌、白血病など数々の困難に出会いながらも、今日まで研究や仕事を貫かれています。


シティコープ(Citicorp)

概   要
創   業/1812年
資 本 金/2584百万ドル
従業員数/従業員数:89,400人
業務内容/金融

Q :まずは並木さんの現在のお仕事内容をお教え下さい
A :
はい。個人金融本部という部門で金融商品の企画・開発や、市場調査のレポートを作っています。 金融商品とは、例えば「住宅ローン」とか「留学生向けの貸し付け」などというようなものです。 これには市場のリサーチと分析が鍵となるのですが、今は金融の革命時代、刻々と変化する情勢をつぶさに見ていかなければなりません。 でも自分の分析が当たると面白いですねぇ。

Q :雇用契約や日々の勤務時間などはどうなっていますでしょうか?

A :
雇用契約は半年更新の契約社員です。 9:00〜17:00までの完全在宅なのですが、家に一人いると結構孤独感を感じてしまう方なので、社にお願いして週2日は出勤をしています(タクシー代は会社から出ます)。

月給制で、在宅でも5時以降業務をした場合は残業手当てが出ますが、実際は残業はあまりしないですね。 出勤表にあたるものはアテンダンスシートというのをつけてまして、自己申告です。


Q :在宅における会社との業務上のやりとり、仕事の仕方のポイントをお教え下さい
A :
業務は金融情勢のレポートが主ですから、非常に裁量性の高いものです。 打ち合わせや連絡は電話、FAXで十分ですし、週2日部分的に出ていますから、上司と飲みに行ってよもやま相談なんかもさせてもらいます。 ワープロソフト、表計算ソフト以外ハイテクなものはほとんど使っていません。

在宅仕事のポイントですが、会社のライブラリ代わりに近所の図書館などは情報収集によく使いますね。 情報ソースとしては日銀の日報、その日の新聞の経済情報などがありますが、我々のような先回りの予測にはなんと言っても人的ネットワークが大事。 したがって電話1本あれば、会社にいようと在宅であろうと仕事には影響ありません

また、自宅の環境で仕事ができるのは、体が楽であることはもちろん、孤独と引き換えに人間的に拘束されない自由がありますから、「勘(カン)」を働かせる商売には向いているのでは。


Q :今までのお体の状態と、お仕事の経緯についてお伺いできますか
A :
ええ。脊髄裂というのは脊髄が破れて血液や免疫、リンパ液などが漏れる珍しい病気です。 ですから、それが引き起こした病気は、膀胱癌、肝臓癌、皮膚癌、白血病とまさに病気のデパートです。 現在は、大腸腫瘍と格闘中です。

家があまり裕福でなかったので、授業料を免除してくれる大学を探し、そこで税法を学んだことが「お金」との出会いでした。 その後会計事務所で仕事をしたのですが、病気がちですから普通の監査業務をやっていたのではまわりの人に勝てない。 そこで、人がやらない、やりたくない業務を進んで手をつけ勉強しました。 例えば、破産した会社の整理やその後の関係者との交渉など。 そうした中で、「並木がいないと困る」という状況を作っていきました。

その後、バブル期に入退院を繰り返しながらコンサルティング業を始め、バブル崩壊後はバブルがはじけて困った方々や焦げ付き物件の処分などを手がけました。


Q :病気のことが全く感じられないほどのご活躍ですね
A :
いえいえ。以前通いだった頃はトイレの失敗を隠すため、ビル内で最後まで残って退出することもありました。 白血病になった時はさすがに「悪運もつきた…」と思い、会社を人にまかせました。 その後、回復してからの仕事探しも大変で、88か所履歴書を出しましたよ。

そんな中で出席した東京都身体障害者職業紹介で、現在のシティバンクと巡り合えました。 私の経歴を考慮してくれ、「在宅でOK」と問題なく言ってくれました。


Q :障害がありながらも並木さんのように働きたいと願っている方々にアドバイスがあればお願いいたします
A :
在宅勤務にかかわらず、働いていくことのポイントは「好きこそものの上手なれ」で、何か一つ自分の専門分野を作ることでしょう。 金融に関していうなら通信教育でも何でもよいのですが、まず基礎を学び、その後はカンを養うこと。 その辺はまさに「好き」なことでないと難しいでしょう。 人がやらないあるいは気づかない「隙間」の仕事を見つけることも大事です。

ビッグバン後の日本ではそれこそ「一人証券会社」なんてのも可能な世界になるかもしれません。 現況を踏まえて先のことに挑戦していく…そんな姿勢が万人に必要になるのでしょう。


★   ☆   ★

インタビューを終えて:

 「わたしは生まれながらにしてオムツの環境ですが、"幸せなことに、貧乏であり奇形であった"と思っています。 一人では生きていけないことを実感で知っているからです。」、インタビューの最後にそうおっしゃったのが柔和な笑顔とともに頭に残っています。

 並木氏の専門性を高く買い、当たり前のように在宅勤務体制をとったシティバンク様の理念は「個人の尊厳」。 病気とともに生活しながら、自分だけの生き方を模索する並木氏にピッタリの社風といえましょう。

 これからも活きのいい経済のお話をお聞かせ下さい!

(堀込)

第2回Javaセミナー
〜Javaとオブジェクト指向技術〜

 去る1月27日に、日本サン・マイクロシステムズ(株)のご厚意により、『第2回Javaセミナー』を開いていただきました。

 オブジェクト指向とはどのようなものか・Javaを理解する為にはどうすれば良いか・テクニカルな話と盛りだくさんの内容をJavaの達人である萩本氏(NJK(株))鈴木氏(日本サン)からご講義いただきました。

 オブジェクト指向の考え方とは、実社会の人間の物の考え方をそのままコンピュータの世界に取り込んだかのような気がします。 Javaもオブジェクト指向型言語なので、Javaを理解する為には、根本となるオブジェクト指向を理解しなければならないと思いました。 Javaは今もなお進展しています。 ですから、今後もっと使いやすい言語になるのではないかと、Javaの「これから」が非常に楽しみでもあります。

[ONE・STEP企画 橋沢春一]

在宅勤務障害者 雇用管理マニュアル
−障害を持つ人を在宅勤務の形態で雇用する場合に− 発行のお知らせ!

 平成6〜8年、当センターで日本障害者雇用促進協会の委託により障害のある人の在宅勤務に関する調査研究を行いました。 その結果として、研究期間最終年に在宅勤務のための雇用管理マニュアル(案)を作成し、これをもとに同協会より編集・発行されたのが標記のマニュアルです。

 初年度のアンケート結果から、在宅勤務で障害のある人を雇用している企業が全国で24社見つかり、次年度、この中から14社を実地聞き取り調査させていただきました。 マニュアルは、この貴重な情報をもとにQ&A形式で作成したものですが、各々のQ&Aに適した事例をコラムとして載せており、雇用主の皆様が在宅勤務方式の導入の際に参考となるものです。

 このマニュアルにつきましては、日本障害者雇用促進協会の開発相談部研究開発課(TEL.03-5400-1625)に送付依頼できますが、当センターにもございますので、ご希望の場合はトライアングル事務局宛(TEL、FAX、E-Mailにて)にご連絡下さい。

[加藤]

トーコロ情報処理センターの重度身障者在宅パソコン講習事業の修了生グループ
ONE・STEP企画のコーナー
 アクロスあらかわ−パソコン講座開催 
(1997.11.22-23 and 29-30)

マンツーマンでの指導  昨年夏、荒川区立障害者福祉会館「アクロスあらかわ」様からトーコロ情報処理センターを通してパソコン講座開催の依頼がありました。 「アクロスあらかわ」でのパソコン講座の開催は初めてで、パソコンに初めて触れる人が楽しめる年賀状作成の企画に取り掛かりました。

 講座は1コース2日間(6時間)を2コース、受講生対象は肢体不自由者でそれぞれ5名で行なわれ、1日目は、Windows95の基本的な操作法(マウスの操作、日本語入力等)を学び、2日目に年賀状ソフト「筆自慢(Ver.11)」を使って、年賀状を作っていただきました。

 この中で、一番印象に残っているのは、受講生自らデザインした年賀状をカラープリンタで印刷された時の笑顔です。新年の挨拶に、講座で作った年賀状を受け取った講師がいました。嬉しいことです。

 講座を行なうにあたって、(株)メッツ様より「筆自慢」を6本、(株)キヤノン様よりBJカラープリンタを5台を無償でお貸しいただきました。この場をお借りして、お礼を申し上げます。

 ノートパソコンを使った講座は初めてでしたが、関係者・ボランティアの皆さんのご協力により、とても楽しく充実した講座となりました。 また、皆様のお陰で、今年の春と秋、「アクロスあらかわ」のパソコン講座を引き受けることが決まりました。 よりよい講座を企画して、ONE・STEP企画が地域の方々に喜んでいただけるよう頑張りたいと思います。

ONE・STEP企画 樗木次男


平成10年度 東京都重度身体障害者
在宅パソコン講習生決定!

 平成10年4月から第16期在宅パソコン講習を始めるにあたり、昨年末に新講習生の募集を行ないました。 今年は23名の応募があり、1月21日に適性試験、2月4日に面接試験を実施しました。 その結果5名の方を決定させていただきました。 今回は5名のうち3名が女性となり、にぎやかな講習になりそうです。

 面接を受けている方が、これまでの病状や将来の希望、この講習にかける思いを切々と語る姿を見ていると、それぞれの希望を受け止める我々の責任の重大さを改めて感じます。

 今年も三菱商事様より試験介助のボランティアの方々にお越しいただきました。紙面を借りて心から御礼申し上げます。

[岩田]

平成9年度秋期
システム・アドミニストレーター初級合格

 おめでとう! 


O.T さん 29才 頚椎損傷1種1級

ONE・STEP企画(在宅パソコン講習 平成9年3月修了)


T.G さん 20才 筋ジストロフィー1種1級

在宅パソコン講習第14期生(在宅パソコン講習 平成10年3月修了予定)


A.H さん 29才 頚椎損傷1種1級

在宅パソコン講習第15期生




編 集 後 記

 先日、トーコロの講習生にお仕事をくださる企業の方とお会いしました。 障害のある方と一緒に仕事をするのは初めてとあって、不安や緊張が伝わってきます。

 でも今回のことは、この担当の方個人の人生においてもきっと何か新しい価値観を生み出すのだろう…、 そんなことを考えていました。 今の自分もそうであるように。

(岩田)    


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